難関大学に多数合格
ユニーク授業で全国から視察相次ぐ
京都市立堀川高校


中西 享 (なかにし・とおる)  経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。1972年共同通信社に入社、経済分野を取材し編集委員などを経て2010年に退職し、現在は経済ジャーナリスト。

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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2004年に国公立大学の現役合格者が3年前と比較して20倍以上の135人(このうち32人が京都大学)を出したことから、『堀川の奇跡』と脚光を浴びた京都市立堀川高校。「公立高校で京大合格ナンバーワン」などとマスコミや学習塾関係者の目を引く中で、同校の教育方針はあくまで生徒一人ひとりに卒業後の社会でいかにして自立して生きていくかを地道に教える。

堀川高校

 勉強は生徒の自主性に任せ、合格者を増やすための入試対策はあまりやらない。課題研究を行う「探究」と呼ぶ授業を重視し、正解のない幅広い問題に対するチャレンジ精神を養おうとしている。こうした受験とは直接関係のないカリキュラムを導入しているにもかかわらず、04年以降も1学年240人の中から平均して120人前後の国公立大学合格者を出し続け、全国の高校や教育委員会からは「その秘密を知りたい」と視察が絶えない。同校や京都市教育委員会などを訪問してその「秘密」に迫った。

「公教育の復権」

 京都市中心部の中京区堀川通りに面した正門を入ると、ガラス張りの洒落たデザインの校舎が目に入る。昨年、校長に就任した恩田徹校長(58)に話を聞いた。

Q:京都は難関大学に多数の合格者を出す中高一貫の有名私立高校が多いと聞いている。

恩田徹 堀川高校校長

A:2000年以前の京都の公立高校は、難関大学に入るには浪人しないと入れないから「公立高校4年制」などと陰口をたたかれていた。それまでは堀川高校も京大合格者が出ない「普通の高校」だった。京都市内には洛南、洛星など中高一貫の私立進学校が多く、「私立高校の天下」だった。その中にあって、市立の堀川高校は、経済的に裕福でなくても生徒の学ぶ意欲を高め進学希望を実現することができる公教育を復権させたいと改革にまい進してきた。私立の中高一貫校には、科目学習を前倒して済ませて、残りの期間で受験技術を磨く高校もあるようだが、堀川はそのようなことはしない。

Q:「探究」という創造的授業と暗記型の受験勉強は相反するものだが、どのように作用して合格者増につながっているのか。学校では「探究」で自主性を育み生徒にやる気を出させ、受験勉強は生徒自身で取り組むように仕向けているのか。

A:1年生から受験につながる勉強はきちんとしている。さらに模擬試験などの外部評価も受け、校内の分析会でも関係教員が共有し、各教科に課題をフィードバックし授業改善に活かしている。おそらく他校よりも密度の濃い分析をしていると思う。受験科目あるいは主要科目と呼ばれる科目の授業時数では毎日7時間実施しているので、公立高校の中では多いほうかなと思う。

 課外活動も思いきりさせているので、塾や予備校に行く暇がなく、授業とその予習復習は結構真剣味がある。各週明けには復習テストを実施、これが土日の自学自習時間の増加につながっているかなと思う。「日々の学習」と「探究活動」を欠かさずにせよと教えている。

Q:堀川高校が京大など有名大学に多くの合格者を出しているのは、京都府全域から優秀な中学生を集めてきているカラクリがあるからだ、という見方があるが。

A:それは誤解だ。この数年で有名私立校の大半が中高一貫に、一部は小学校から小中高一貫になったことで、小学校、中学校の段階から優秀な生徒は「青田買い」をされて私学に流れる傾向がある。今年の場合、堀川は志願書ベースでは倍率は1.8倍とまずまずだった。

 しかし、私学合格発表後に公立高校の試験が実施されるため、私学と堀川を併願していた生徒で、私学に合格した生徒が堀川を受験せず、最終的な倍率は1.5倍に下がった。私学には授業料免除する特別待遇制度などもあり、そうしたことが私学を選択した理由の一つと思われる。公立高校としては、教育目標と教育内容の魅力で勝負していきたい。

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著者

中西 享(なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。1972年共同通信社に入社、経済分野を取材し編集委員などを経て2010年に退職し、現在は経済ジャーナリスト。

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