WEDGE REPORT

2015年7月6日

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ジョン太郎 (じょん・たろう)

現役金融マン

大手銀行入社後、日系・外資系の様々な金融機関で、商品開発や戦略企画などの要職に就く。投資信託や不動産ファンド、ヘッジファンド、機関投資家の自己資金運用など様々な分野で投資・運用ビジネスに携わり、株式・債券・為替・REIT・不動産・コモディティ・デリバティブ等、多種多様な金融商品に精通。2005年より、ブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」を開設。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわる様々なトピックをわかりやすく親しみやすい言葉で解説し、人気を博している。近著に「外資系金融マンがわが子に教えたい「お金」と「投資」の本当の話」。そのほか、マネックス証券の「マネックスラウンジ」にてコラム「お金の相談室」連載中。著書に「ど素人が読める決算書の本 第2版」「ど素人がはじめる投資信託の本」(いずれも翔泳社)がある。http://jovivi.seesaa.net/

 

今のギリシャは誰にお金を借りているか

 今のギリシャの借金は、少し前とだいぶ様相が変わっている。お金の貸し手が変わり、取り立てをしに来る人間が変わったのだ。それでも、その相手は「身内」ではない。「親戚」かもしれないが、「親」ではないし、「良い関係とは言えない親戚」といったところだ。

 今のギリシャの国(政府)の借金は約43兆円で、その内訳を見てみると、7割以上がECB(欧州中央銀行)やEFSF(欧州金融安定ファシリティー)やIMF(国際通貨基金)などの公的機関が貸し出しているものだ。このうちIMFの分は1割ほどで、この部分が6月30日に返済期限を迎え、延滞となった。6割以上を占めるECBとEFSFの分が「良い関係とは言えない親戚」からの借金だ。

 公的機関以外の「民間」が貸している分はギリシャ政府の借金のうち3割以下の約12兆円。民間部分のうちギリシャの銀行が抱えている分は2兆円程度、主要国の銀行が抱えているのは数千億円レベルで(日本の銀行は15億円)、残りの部分はリスクを承知で抱えているファンドや機関投資家などが持っている。一方、「ギリシャの民間部門」の借金は約17兆円で、そのうちの15兆円を米英独の3か国の銀行が4~5兆円ずつ抱えている。

今後をどう考えればいいか

 そんな借金問題を抱えるギリシャの経済状態はとても悪い。ギリシャのGDPはリーマン・ショック前の2007年と較べて26%も減少した。

 失業率は25.6%にもなり、25歳以下の若者の失業率は49.8%と極めて高い。ギリシャはこれまで、借金取りたちから凄まれてそれなりの努力をしてきた。ギリシャの財政収支はGDP比で3.5%の赤字で、10%以上の赤字を出していた2011年までと比べてかなり改善している。

 少なくともGDP比で8.3%もの赤字となっている日本よりはだいぶ良い。しかし、借金取りから言われたように財政を健全化してきたにも関わらず、ギリシャの経済は良くならず、むしろ悪化した。このことはギリシャの人々にとって大いに不満であることだろう。

 結局のところギリシャの問題は、親から借りたお金で運営している会社を立て直すのではなく、銀行(債権団)から借りたお金で運営している会社を立て直す問題なのだ。次々にやってくる借金の返済期限の度に、「無駄遣いをなくせ」「無駄遣いをもっと減らさなければ借り換えには応じない」と言われ、売上を伸ばすこともできず、売上アップのためにお金を使うことも認められず今日に至っているというのがギリシャの問題なのだ。

 もちろんギリシャ側の問題もたくさんある。私は、ギリシャの最大の落ち度は、銀行(債権団)との信頼関係を壊してしまったところにあると思う。銀行(債権団)とともに、借金の借り換えをしながら立て直していくのであれば、銀行(債権団)との信頼関係を崩してしまってはどうにもならない。その典型例が今回の国民投票だろう。

 今回の国民投票は単なる通過点の1つだ。最終的に、銀行(債権団)と共に会社を借金問題・信用問題から立ち直らせることができるのか、喧嘩分かれに終わってしまい双方痛み分けとなるのか、はまだまだこれから先の話だ。少なくとも、ギリシャがユーロ圏から離脱するか否か、デフォルトするかどうか、を言い当てることに私はあまり意義を感じない。

 借金問題を抱える会社の再建プロセスは、あなたがお金を貸しているわけではないのなら、あるいはもう少し踏み込んであなたの取引先がその借金問題を抱える会社と取引しているとしても、あなたの取引先が充分吸収できるくらいのレベルの話なら、あなたはパニックになるべきではないし、冷静に見守るべきだ。

 ギリシャの地理的な位置と軍事的な重要性から、アメリカはドイツに対して「ギリシャの問題は粘り強く、慎重に、対話を続け、短気を起こしたりせずに……」というような話をしているが、要するにアメリカにとってはそういう話、ということなのだ。

 

  
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