コラムの時代の愛−辺境の声−

2015年7月10日

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藤原章生 (ふじわら・あきお)

毎日新聞記者

1961年、福島県生まれ。北海道大学工学部卒業後、住友金属鉱山に入社。89年に毎日新聞社に入り、ジャーナリズムの道へ。92年に外信部に所属し、 93年にメキシコ留学。帰国後の95年から南アフリカ・ヨハネスブルグでアフリカ特派員、2002年からは、メキシコ市支局長、ラテンアメリカ特派員。08年〜12年までローマ支局長。5 年半に渡るアフリカ特派員時代の取材を元にした著書『絵はがきにされた少年』(集英社文庫)で05年の開高健ノンフィクション賞受賞。著書に、『世界はフラットにもの悲しくて』(テン・ブックス)、『資本主義の「終わりの始まり」―ギリシャ、イタリアで起きていること』 (新潮選書)、『ギリシャ危機の真実 ルポ「破綻」国家を行く』(毎日新聞社)『翻弄者』(集英社)、『ガルシア=マルケスに葬られた女』(集英社)。

 それからこの方、欧州中央銀行などは、とにかく財政を立て直し、何とか返済できる体力をと、借金の棒引きや付け替えで支援金を注ぎ込んできたが、ギリシャは一向に回復せず、ずるずるとここまで来た。国際通貨基金(IMF)の借金の一部が返済期限を迎えた6月末、「返せません」となり、今回のデフォルト(債務不履行)となった。従来の「事実上のデフォルト」が「正式のデフォルト」になりそうな事態となった。

 危機の初期、アテネの町で「国勢調査員」のように一軒一軒話を聞いて回ったときのギリシャ人の言葉が忘れられない。

 「大体、ギリシャ国債なんか買う方が悪い。俺たちは政府の連中をよく知ってるから、利子が高くたって絶対に買わない」「ドイツの大企業とか、ギリシャに借金させて資金を集め、もうけた連中がいるだろ。そいつらが返せばいいんだ」「なんで俺たちが増税や年金減らしでツケを払わされるんだ」「国の、政治家の失敗だろ、なんでそれを国民が払わなきゃならないんだ」

 商人や勤め人、年金生活者、観光ガイド、ミュージシャンといろいろだが、実に多くの人からこんな話を聞いた。

アテネ市内に見られる「メルケル銀行」という落書き(Getty Images)

 それから5年あまり。パパンドレウ氏は去り、首相はサマラスというやはり世襲政治家の右派を経て、今のチプラス首相となった。日本で言えば、といってもそんな事態は考えられないが、政権が民主党から自民党に戻り、それでもだめで、ついに「庶民の味方」といい続けてきた左翼政党から首相が躍り出てきた。ちょっと想像はつかないが、社民党の福島瑞穂さんが突如人気を博し、「この際、最後の切り札に」となんとなく選ばれたようなものだ。

「瀬戸際」といい続けてはや5年
ギリシャの危機状態はずるずるとつづいていく

 チプラス首相は、新たな増税や年金削減策を盛り込んだ、EUなどが作成した構造改革案を受け入れるかどうかを国民投票で問い、投票者の6割超から「反対」という答が出た。

 「緊縮に耐え、我慢します」と言っては欧州中央から金を引き出し、危機の渦中も借金を積み上げてきたギリシャ。依然、被害者意識の強い国民たちが「とにかく俺たちはもう払わない」と、ようやく本音を公式にぶちまけた記念日、とも言える。

 それで、即、ユーロを離脱し、現地通貨ドラクマも戻るかといえば、そんなことない。「国民が反対って言ってますから」と、チプラス首相はあれこれ言い訳しながら欧州中央などから、新たな支援金を引き出す策を練るはずだ。「瀬戸際」といい続けてはや5年、ギリシャの危機状態は、ずるずると続きそうだ。

  
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