イノベーションの風を読む

2015年7月14日

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川手恭輔 (かわて・きょうすけ)

コンセプトデザイン・サイエンティスト

1990年代から、大手メーカーでインターネットサービスの企画・開発・運用を手がけ、自ら立案したグローバルなサービスを複数立ち上げた経験を持つ。その1つは、サービスのデザインでグッドデザイン賞を受賞した。コンピューターサイエンス関連の翻訳本も多数ある。

 6月23日の株主総会で、2年連続の最終赤字と上場以来初の無配になったことをトップが陳謝したソニーが、その一週間後の6月30日に大型の増資を発表した。公募増資と新株予約権付の社債で調達する予定の4413億円のほとんどは、イメージセンサー増産のための設備投資と研究開発に充てられるという。ソニーは2015年度に1400億円の最終黒字(純利益)に転換し中間期の配当を復活させるとしているが、その具体的な施策については明確にしていない。

イメージセンサーの一本足打法なのか?

 次のグラフは、映画と音楽と金融を除いた、いわゆるエレキに分類される事業とデバイス事業の売り上げの合計に占める各事業の割合を、4月30日の業績説明会の資料から拾ったものだ。デバイスはイメージセンサーを切り出し、ゲーム&ネットワークサービスはゲーム機とソフト・ネットワークに分けて表した。

 売り上げの合計の数字は2013年度が4兆9185億円、2014年度が5兆5964億円、そして2015年度の見通しが5兆6100億円となっている。

 2015年4月の組織変更によってソネット(株)の一部がモバイル事業に編入され、それによって2015年度の売り上げが若干かさ上げされている。その枠組みで2014年度の実績を再計算すると5兆7402億円となり、2015年度はエレキ事業とデバイス事業の合計は対前年度で減収となってしまう。

 2015年度の1400億円の最終黒字の前提となる2500億円あまりの(営業)利益改善へのこれらのセグメントからの貢献は、モバイルの赤字幅の縮小(+1,786億円)とイメージセンサーを含めたデバイスの増益(+320億円)しかない。

 他はこれまでの大掛かりな構造改革にもかかわらず減益の見通しとなっている。1年前の経営方針説明会で、平井一夫社長は「2014年度中にエレキ事業の構造改革をやり切って2015年度には持ち越さない」と言った。

 しかしグラフで事業規模の推移を見る限り、事業の集中と選択という経営の意思は感じられない。

 設備投資によるイメージセンサーの増産の効果が期待できるのは2016年度以降になるだろう。特にハイエンドの分野ではソニーのCMOSセンサーには技術的なアドバンテージがあり、現時点では造れば売れるという状況だが、そのiPhoneへの依存度の大きさが懸念される。どうしてもシャープの液晶一本足打法を連想してしまう。

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