2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年7月22日

 台湾の国民党の総統候補に洪秀柱(立法院副議長、女性)が急浮上したことについて、6月17日付の台北タイムズ社説は、その背景や意味を分析し、国民党がますます衰退することに繋がる可能性を指摘しています。

画像:iStock

 すなわち、国民党の総統候補として洪秀柱が急浮上したことは、何を意味するか。一つは、国民党にとっての危機が、同党の組織強化の分水嶺となり得る。もう一つは、洪の「一つの中国」指向の見方を国民党が丸ごと受け入れれば、国民党の終焉を告げることになり得る。

 国民党は、1996年の第1回目の総統選以来、制度化された予備選を必要とせず、実施もして来なかった。しかし、洪は透明な手続きで生まれた候補者であり、国民党が恣意的であるとの懸念を払拭する助けとなりうる。

 他方、洪を国民党の候補者として選ぶことは、党が置かれている苦境について多くを物語ることになる。彼女は、明らかに党のファースト・チョイスではない。洪の選出は、馬英九と王金平・立法院長の溝は埋めがたく、馬英九は、王金平に取って代わられるリスクを冒すぐらいならば洪に党を代表させる、というところまで来たことを示唆する。

 洪が候補者になる可能性が出てきたのは、国民党の有力者たちが、困難な選挙戦と、それにおける敗北が自らの政治的キャリアにとり何を意味するかを見越して、出馬を見送った結果でもある。

 馬と王の内紛は、国民党内の未解決で根強い大陸派対本土派の問題を示唆する。洪の経歴は、党の強硬派の要求には適っているが、同時に、国民党を一般大衆から遠ざけることにもなる。

 予備選の初期段階から党の大物政治家が不在であることが、国民党を中華民国の守護者と信じ切っている洪を選ばせ、台湾中心の価値を唱える野党に強く対峙させようとしている。

 しかし、台湾の最近の政治的雰囲気を考えれば、洪が、中華民国は中国であるとの イデオロギーを強く信奉し、台湾独立の考えに強い敵意を抱いていることは、国民党にプラスになりそうもない。

 彼女は、国民党の立法院議員候補からの圧力を受け、妥協するかもしれない。


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