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満蒙開拓、夢はるかなり――加藤完治と東宮鐵男(とうみやかねお)(上)
牧 久 著

目次 立ち読み

 

「共に往かん アムールの果て 韃靼の海」(東宮鐵男)。未墾の原野の開拓に情熱を傾けた農本主義教育者・加藤完治。「満州」に日本人の開拓村建設の夢を描いた軍人・東宮鐵男。関東軍作戦参謀・石原莞爾を介して二人の人生がクロスする――。「満蒙開拓の父母」と称される二人の生涯を通して、開拓の理想と現実の乖離、その悲惨な結末を描きつくしたノンフィクション。『特務機関長 許斐氏利』『「安南王国」の夢』『不屈の春雷』と昭和史の闇に光を当ててきた著者渾身の力作。

<書籍データ>
◇四六判上製 312ページ
◇定価:本体1,600円+税
◇2015年7月21日発売
◇ISBN: 978-4-86310-147-0

<著者プロフィール>
牧 久(まき・ひさし)
ジャーナリスト。1941年大分県生れ。早稲田大学第一政治経済学部卒業。日経新聞副社長、テレビ大阪会長を経て現在、日本経済新聞社客員、日本交通協会会員。著書に『サイゴンの火焰樹――もうひとつのベトナム戦争』『特務機関長 許斐氏利――風淅瀝として流水寒し』『「安南王国」の夢――ベトナム独立を支援した日本人』『不屈の春雷――十河信二とその時代』(各小社刊)がある。

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<立ち読み>

 

「新幹線生みの親」十河信二は、満鉄理事時代に満州事変の仕掛け人、石原莞爾と盟友関係を結び、「五族協和、王道楽土の満州国」建国の理想に燃えていた。この頃、加藤完治は奉天(現・瀋陽)で石原莞爾と会い、ソ満国境沿いに日本人の開拓移民の必要性を訴えていた軍人、東宮鐵男を紹介され、意気投合する。
「狭い日本国内で土地を持たない農家の二、三男を自作農化するには限界がある」と満州への移民を考えていた加藤に対して、東宮は「ソ連の南下を防ぐための“屯墾軍”の入植」を考えていた。二人の開拓移民構想に賛同した石原は、張作霖(学良)軍が撤退した広大な兵営跡地への「日本国民高等学校北大営分校」開設を後押しする。冬場の気温は零下四十度近くまで下がる極寒の地、ソ満国境沿いに入植するには、寒冷地農業に対する研究や訓練が必要だった。加藤も東宮もまた、石原らが実現しようとしていた「五族協和、王道楽土」の「満州国」建国に共鳴していた。
あの時代、日本人にとって「満州」とはどんな地域だったのか。石原たちはどんな思いで「満州国」を建国しようとしたのか。私は『不屈の春雷』の中で、石原、十河ら当時、「満州派」と呼ばれた人たちと加藤完治が盟友関係にあったことに触れた。考えてみれば石原莞爾も戦後、満州事変の仕掛け人として「中国侵略の元凶」と名指しされ、「陸軍悪玉の張本人」とされてきたのである。上海事変後、日中戦争が激化すると、参謀本部作戦部長だった石原莞爾は、中国との戦争拡大に体を張って反対、その職を追われる。
中国・華北で「興中公司」社長として中国の経済発展の先頭に立っていた十河信二も、日本から続々進出してきた財閥系の大資本に追われるように帰国する。十河は帰国すると、満州で知り合った加藤完治を訪ね、青少年義勇軍内原訓練所の青少年たちの純粋な志に感動、彼らとしばしば膝を交えて意見交換をし、また、加藤らが創設した「学生義勇軍」の会長も引き受けた。国内の学生が学業の余暇を利用して自発的に農業開墾などに当たる組織で、十河は学生たちとともにモッコを担ぎ、鍬をふるって国内各地の開墾や食糧増産に取り組んだのである。石原や十河と加藤完治の親交は、後に加藤ファンの一人だった高松宮宣仁親王も巻き込んだ“東条英機暗殺未遂事件”にまで発展する。


 




<目次>

序 章「渡満道路」を辿る 
第1章 農本主義教育者・加藤完治の誕生
第2章 軍人・東宮鐵男と中国大陸
第3章 国民高等学校運動と加藤グループ
第4章 満蒙移民の胎動と満州事変
第5章 動き出した満蒙開拓移民
第6章 第一次武装試験移民(弥栄村)の入植

 


 


 

 

 

 

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