2024年4月17日(水)

WEDGE REPORT

2015年7月23日

 それでは、LAEVで取り組むエコライフを覗いてみることにしよう。まずは、ソーラー給湯システムだ。「湯を沸かすために再生可能なエネルギーを使用することで、ガスの使用をなくしました」。

屋上に設置されたソーラー給湯システム

 また、2003年には太陽光発電パネルを30枚設置し、月に約187kWhの電力を供給する。

 「当時、太陽光発電パネルの取り付けを専門学校で学んでいた住民がいましたので、パネル代のみの支払いで労働力を提供してくれました」。

 来年は、さらに120枚が追加され、これでLAEV全世帯の電気代がまかなえるという。さらには、電力会社に電力の販売も行う予定だ。そして、排気ガスの排出を抑えるために、施設内には自転車置き場を設置し、自転車の使用を奨励する。

 「自家用車を持たない住民は、月々の家賃から25ドル(約3075円)のディスカウントがあります」。その他、自前の堆肥を利用した自家菜園、オーガニックの醤油やクルミなどの量り売りシステムを導入し、余分な容器の無駄を省くなど、可能な限りエコライフを追求する。

自転車置き場

 「ここの生活の様子は、月に2、3回、一般人など1回10~20人のグループにガイドをつけて紹介するツアーで見学することができます」

 小学校などの課外授業や、企業や団体の外部研修として、ツアーが開催されることもある。「ツアーを通して、エコライフを多くの人たちに実践してもらうことが狙いです」

 マスコミの報道やツアーを通じて、LAEVのような活動を模倣する人たちも少なくない。

 「なかには、ツアー後に、自分たちで実践し始めたことを知らせてくれる人たちもいます」。たとえば、週に一度、近所の人たちと夕食を共に過ごす「コミュニティディナー」を開催するようになった人、自家用車を断念した人、生ゴミの堆肥を始めた人などだ。

堆肥作り

 そんなアーキンさんが行なうLAEVでの取り組みは、カリフォルニア州政府からも認められ、アーキンさんは、2006年にカリフォルニア州ウーマン・オブ・ザ・イヤーなど数々の賞を受賞する。

 また、1992年にオーストラリアで開催された「International Ecocity Conference」を皮切りに、2007年に東京で開催された「エコビレッジ国際会議」の海外ゲストとして出席するなど、エコロジーに関するセミナーや大会などで数々のメインスピーカーとして招待されている。

 「私が行なうのは、目的を明確にすることだけ。そうすれば、あとは周囲の人たちが実現してくれるんです」。アーキンさんはこれまで彼女が行なってきたこと、また、彼女の亡き後に彼女自身のことは忘れられてもかまわないから、このコミュニティは持続してほしいと話す。

自家栽培される野菜

 「父から『だれが名声を得るかを気にしなければ、どんなことでも達成できる』と教わりました」。

 そんな信条を持つアーキンさんが創設したLAEV。今後も、ますます人々のエコに対する意識を高める役割を果たしていくだろう。

 

 

  


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