2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年7月27日

出典:Shashi Tharoor,‘Taking the BRICS Seriously’(Project Syndicate, June 19, 2015)
http://www.project-syndicate.org/commentary/cooperation-major-emerging-economies-by-shashi-tharoor-2015-06

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 筆者タルールは、如何にして台頭する諸国が既存の国際秩序においてふさわしい地位を得るかという問題と、BRICSのグループとしての意義如何という問題とを区別せずに論じています。

 前者については、確かに、台頭する諸国を然るべく包み込んで行く必要はあります。現実を反映しない秩序は続きません。国際金融機関における中国の投票権を是正すべきことはその通りでしょう。しかし、この問題は既存の秩序を主導してきた諸国が考えなければならない問題であると同時に、台頭する諸国が筆者のいう「テーブルの席」をその能力、貢献によってどうやって掴みとるかという問題でもある筈です。力によって一方的に現状の変更を試みる諸国やサイバー攻撃への関与が疑われる諸国が「テーブルの席」を用意しろといっても、それは容易に認められるものではありません。理念や価値観が異なるとどうしても制約が生じます。これら諸国がどういう「テーブルの席」を欲しているのかについても、筆者は、中国の投票権の問題に言及するのみで、何等示唆するところがありません。

 筆者は、BRICSというグループがとりわけその経済規模の故に無視出来ない存在となっているといい、もし排除され続けるのであれば彼等自身のシステムを作る以外にないと言います。しかし、BRICS諸国に共通していることは筆者がいうように「当然与えられるべき地位から排除されている」と思っていることです。BRICSの意義はこの一点にしかないのです。二国間関係に問題を抱え、安保理改革などの国際問題についての立場の違いがあり、政治組織になりようがありません。拠って立つ理念も違うし政体も異なります。地域的、文化的な繋がりもありません。筆者自身、BRICS諸国を使い分けて論じています。中国主導の国際秩序にはインド、ブラジル、南アフリカは心穏やかではあるまいというに至っては、「語るに落ちた」というべきでしょう。確かに、BRICSは昨年7月新銀行の設立に合意し、新銀行は近く活動を開始するとも伝えられます。しかし、BRICSが国際関係の中で一つの有力な核として機能し、彼等自身のシステムを作る力量を持つことは未だ立証されてはいません。

  
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