なんで造反議員が出ないのか
選んでくれた人への誠意、与野党模様


藤原章生 (ふじわら・あきお)  毎日新聞記者

1961年、福島県生まれ。北海道大学工学部卒業後、住友金属鉱山に入社。89年に毎日新聞社に入り、ジャーナリズムの道へ。92年に外信部に所属し、 93年にメキシコ留学。帰国後の95年から南アフリカ・ヨハネスブルグでアフリカ特派員、2002年からは、メキシコ市支局長、ラテンアメリカ特派員。08年〜12年までローマ支局長。5 年半に渡るアフリカ特派員時代の取材を元にした著書『絵はがきにされた少年』(集英社文庫)で05年の開高健ノンフィクション賞受賞。著書に、『世界はフラットにもの悲しくて』(テン・ブックス)、『資本主義の「終わりの始まり」―ギリシャ、イタリアで起きていること』 (新潮選書)、『ギリシャ危機の真実 ルポ「破綻」国家を行く』(毎日新聞社)『翻弄者』(集英社)、『ガルシア=マルケスに葬られた女』(集英社)。

コラムの時代の愛−辺境の声−

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国会中継をテレビで見ていて、あれ? っと思うことがあった。画面の中に何か変な物がある。単に私が長く、こうした光景から目を背けてきたせいかもしれないが、微かな違和感がある。それは、いつもながらの芝居がかった情景なのだが、登場人物、しかも脇役たちがちょっと変なのだ。

 何だろうと思って、もう一度目をやり、ようやくわかった。プラカードだ。

衆議院平和安全法制特別委員会でプラカードを掲げる野党議員(Natsuki Sakai/Aflo)

 「強行採決、反対!!!」

 「アベ政治を許さない」

 「自民党、感じ悪いよね」

 などと太字で印刷された原色の派手なプラカードが何枚も画面に映っている。頭上に掲げたプラカードをカメラの方に向けた野党議員たちが、何やらしきりに叫んでいる。

 7月15日午前、衆議院の平和安全法制特別委員会での一コマだ。安倍晋三内閣が提出した安全保障関連法案がこの日、委員会で強行採決されるのを阻もうと、野党議員が委員長席に詰め寄っている場面だ。

 このプラカードのせいで、野党議員の挙動がさらに芝居臭くなっている。彼らが委員長を取り囲むのはいい。採決を告げるためのマイクを委員長から奪い取ったり、ひたすら恫喝したり、ついにはもみ合いとなり、その光景が世界のお笑いニュースで取り上げられたりといったことはよくある。

 だが奇妙なのは、いつから始まったのか、彼らがプラカードを手にし、中には委員長に背を向け、報道陣のカメラに向かって何かを叫んでいる、その絵柄だ。

 デモ行進をする市民運動ならわかる。でも、それと同じなのだとすれば、これは一種のデモンストレーション。自分たちの威力や気勢を他に示す示威行動、宣伝活動と言える。

もっと小道具に気を遣ったらどうか

 彼らはそれを委員長でも、安倍政権の面々にでもなく、カメラの向こうの視聴者、読者、ひいては国民に示していると言えそうだ。「俺は反対しましたからね」と。

 安保法案をめぐっては、憲法学者たちの多くが違憲と解釈したが、委員会でのその違憲性が十分議論されたとは言い難い。そして、予定調和のように、絶対多数を持つ自民、公明議員が、委員会、そして衆議院で採決を強行させる流れになった。

 でも、それならせめて自家製の、議員宿舎で夜なべして作ったインパクトのある手書きのプラカードを掲げてほしいものだ。各党がどこかでカラーコピーしたか、業者に頼んだような出来合いの同じものを手にして、ワイワイ騒いでいるのは、三文芝居のエキストラのようで、安っぽい。どうせ芝居をするなら、もっと小道具に気を遣ったらどうだろう。

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「コラムの時代の愛−辺境の声−」

著者

藤原章生(ふじわら・あきお)

毎日新聞記者

1961年、福島県生まれ。北海道大学工学部卒業後、住友金属鉱山に入社。89年に毎日新聞社に入り、ジャーナリズムの道へ。92年に外信部に所属し、 93年にメキシコ留学。帰国後の95年から南アフリカ・ヨハネスブルグでアフリカ特派員、2002年からは、メキシコ市支局長、ラテンアメリカ特派員。08年〜12年までローマ支局長。5 年半に渡るアフリカ特派員時代の取材を元にした著書『絵はがきにされた少年』(集英社文庫)で05年の開高健ノンフィクション賞受賞。著書に、『世界はフラットにもの悲しくて』(テン・ブックス)、『資本主義の「終わりの始まり」―ギリシャ、イタリアで起きていること』 (新潮選書)、『ギリシャ危機の真実 ルポ「破綻」国家を行く』(毎日新聞社)『翻弄者』(集英社)、『ガルシア=マルケスに葬られた女』(集英社)。

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