2024年4月25日(木)

国土と日本人

2015年7月28日

土地の細分保有

 成田空港は1000㌶の広さを持つが、御料牧場があったにもかかわらず地権者は1000人を超えていたといわれる。ところが、フランスのシャルル・ド・ゴール空港は3000㌶もあるのに地権者はたった10人だったという。

 このあたりは特に大土地保有されていた地域なのかも知れないが、何という少なさなのかと驚きもし、またうらやましくもある。絶対的土地所有権意識が貫徹しているわが国では、地権者の数の多さはそのまま土地取得の困難さに直結するからである。

 フランスが初期に建設した新幹線TGVにパリ~リヨンを結ぶものがある。この両都市は直線距離で400㎞も離れているがトンネルが一つもない。わが国の新幹線はトンネルが多く東京~新横浜間でも三本ものトンネルがあることと比較して、わが国土は山岳だらけでインフラ整備が厳しいことの象徴として紹介されることも多い。

 ここで紹介したいのは、このTGVの線路が路線の広い範囲にわたって低い位置にあり低盛土上に設置されていることである。わが国の新幹線や高速道路は、横断交通を処理するため道路空間が確保できるように下方に原則として4.5㍍の空間を設けている。そのため線路や路面はかなり高い位置に設けることにならざるを得ない。

 これは、わが国では土地が細分保有されているために横断交通空間をたくさん設けなければならないことが原因の一つになっていると考えている。逆にフランスで走っていると、新幹線でこんなに地域分断して大丈夫なのかという感じなのである。

 横断施設を頻繁に設ける必要がなく、そのために低盛土で建設できる新幹線を持つ国は幸せである。それだけで工事費が大きく変わるからである。わが国は背の高い構造物を造らなければならないだけでも大変なのに、ここに地震が襲うことを考慮しなければならないし、構造物が立つ地盤が軟弱だからその対策も必要になる。

 フランスでは、ほとんどの地域で地震を考慮する必要はないし軟弱地盤対策も不要なのである。しかし、これらをふまえた内外価格差議論が行われないのが、わが国の現実なのである。

  
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