WEDGE REPORT

2015年8月5日

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 米国の情報収集の完全な失敗だが、なぜこんなことが起きたのか。それは過激な行動を控えていた最近の「ヌスラ戦線」の“穏健な”行動が背景にあり、米国は完全に欺かれたと言えそうだ。「ヌスラ戦線」は元々、ISの傘下にあったが、アルカイダがISとけんか別れしたことで、同戦線もISから離れた。しかも最近は、穏健派も含む反政府連合軍に加わって一緒にアサド政権軍に対する戦いに参加していたことから、米国はすっかり油断していたようだ。

 「ヌスラ戦線」は声明で、攻撃の狙いが米国の肝いりの「第30軍団」がシリアで地歩を築く前に排除することにあったとし、米国とともに行動するグループは受け容れない、と牙をむいた。同戦線は反政府勢力の間では、その強力な戦闘力が評価されて人気が高い。逆に軍団が攻撃を受けた際、助けに駆け付けた反政府勢力はなく、米国の不人気ぶりがはからずも浮き彫りになった。
 

トルコの本音が鮮明に
ISを口実にクルド人勢力を空爆

 こうした想定外の展開の中で、ISに対する空爆に踏み切ったトルコのエルドアン政権の本音が一段と鮮明になってきた。トルコは軍事介入し、シリア領内に「安全保障地帯」を設置する見返りとして、米国に南部のインジルリク空軍基地をIS攻撃に使用させることを容認した。

 しかしISに対する空爆はこれまで3回なのに対し、イラクにあるトルコ反体制武装組織「クルド労働者党」(PKK)の拠点に対する空爆は6回にも及び、IS攻撃を口実にして、PKKをたたくというエルドアン政権の本音が明らかになっている。

 しかもこのイラクのPKKの拠点に対する空爆で民間人らが多数犠牲になっていることも分かっており、今後、欧米からトルコに対する批判が高まるのは必至。オバマ政権はトルコのPKKたたきがISとの戦いを複雑化させるとして自制を求めているが、「ヌスラ戦線」対策にも取り組まねばならず、頭を抱えている。 

  
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