チャイナ・ウォッチャーの視点

2009年9月17日

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富坂 聰 (とみさか・さとし)

ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリストや研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信社外信部記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
◆更新日 : 毎週木曜

 10月1日に建国60周年を迎える中国のメディアでは、さまざまな角度から新中国の歴史を総括する記事が目立ってきた。

 新中国の歴史は、天安門事件のように未だ共産党自身も正視できない歴史を抱えながらも、国民に物質的な豊かさをもたらしたことで概ね及第点を得ているように見える。記者や研究者がみな勝ち組となったいま、社会の負け組の代弁者はいないのだから当然だ。

 目立つのは、昨秋のリーマンショックで馬脚を現し衰弱著しいアメリカへの対抗心から中国のシステムの勝利を声高に謳う論調だ。

近似するアメリカと中国

 世界金融危機の遠因には中国が人民元レートを切上げず貿易黒字を米国に還流したこともあったはずだ。この点、アメリカと中国はまさに「酔っぱらいとバー」の関係であったのだが、そんなことはどこ吹く風らしい。

 ただ皮肉なことに中国のシステムならぬ特徴は世界に伝染していることは間違いない。

 特筆すべきはアメリカと中国の近似ぶりだ。いまアメリカは緊急避難的な企業救済で主要産業が半国有化され国家資本主義とも形容される状態だ。一方の中国は社会主義に市場経済を導入した。両国は入口こそ正反対ながら同じ場所に着地したようにも見える。米中ともに人口が多く一部にスーパーリッチが存在し裾野には膨大な貧困層を抱えるという事情も似通っているし、医療保険などセーフティーネットがボロボロのまま過当競争が繰り広げられている点でも共通している。

 アメリカや中国ばかりではない。

 いま世界経済は各国の巨額な財政出動で一息つき、多くの先進国で4~6月期のGDPがプラスに転じた。しかし不思議なことに各国とも数字が上向いても、それがまったく雇用の改善に結びついていないのだ。

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