2024年4月19日(金)

ASEANスタートアップ最前線

2015年8月17日

人口2億4000万 巨大マーケットを抱える
インドネシアに引き寄せられる起業家  

ジャカルタ(iStock)

 ASEANの中でもダントツに人口が多いのがインドネシアだ。2億4000万人、約90%をムスリムが構成するこの国は、交通環境の悪さや汚染問題など、ソーシャルな課題を多数抱えている。それは、起業家からすれば、ASEANの中では最も魅力的な「現場」と言える。

 2014年、インドネシア政府の技術省大臣のRudiantaraは、10億ドルを調達し、IT系スタートアップに投資する、と構想をイベントで高らかに発表した。しかしながら、2015年現在、政府のスタートアップ業界への関与は限定的だ。そもそもITインフラの整備が目下課題であり、政府はこちらの対応に追われているようだ。

 インドネシア政府に代わって、起業家養成プログラムとして存在感を出しているのが海外系列のシードアクセラレーターである。たとえばGEPI(Global Entrepreneurship Program Indonesia)という起業家を育成するNPO団体がある。これは、アメリカ合衆国がオバマ大統領の指揮のもと推進しているGEPのインドネシア版だが、東南アジアでは唯一の対象国となっている。経済発展という大義名分の下で、起業の仕方やメンタリング、投資家とのネットワーキングイベントを開催し、スタートアップから経済開発を積極的に推進している。

 しかし、起業家育成プログラムはインドネシアに必要なのだろうか? 巨大なマーケットの存在そのものが、既に国外から優秀な人材を大量に惹きつけているからだ。日本を含む世界中の起業家が、欧米で証明されたITスタートアップの成功モデルをこぞってインドネシアに持ち込み、ビジネスを展開している。市場の魅力そのものが、スタートアップシーンを盛り上げている。こうした傾向から考えると、インドネシアにおける起業家育成プログラムは、インドネシア国民から経営陣側として成功者を生み出すということに大きな意義がありそうだ。

 タイ・ベトナム・フィリピンについては、インドネシアと同じく、政府主導でのスタートアップ・エコシステムはまだまだ発達していない。しかしながら、ASEANという巨大マーケットは確かに存在し、各国の魅力は益々高まることから、シンガポール・マレーシアに続いて、より優秀なタレントを誘致しようと躍起になるに違いない。もしくは、市場の魅力に魅せられた有力な起業家が、ASEAN各国に自発的に移動するであろう。まさに、ASEAN起業家獲得戦争の勃発だ。

  
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