田部康喜のTV読本

2015年8月18日

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田部康喜 (たべ・こうき)

東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 SFドラマのネタは尽きない。現在と未来が交錯するとき、そこにはコメディーが生まれる。

 テレビ朝日の金曜ナイトドラマ「民王(たみおう)は、民政党の総理大臣の武藤泰山(遠藤憲一)が、息子の翔(菅田将暉)の人格が入れ替わる。バイトに明け暮れる翔は、学力がともなっていない出来損ないの息子である。

 バイト先の喫茶店にやってきた、高利貸しの手下ともみ合ううちに、止めに入った経営者の妻にフライパンで頭を殴られた瞬間に、総理大臣である父親と頭脳の中身が入れ替わってしまう。

 BSプレミアムの「オンナミチ」(火曜夜)は、レコード会社に勤める山口梨花(片瀬那奈)が、元カレの鈴木マサオ(淵上泰史)と飲んだ勢いでよりを戻して、自宅で反省していると、20年後の自分と名乗るおばちゃん(渡辺えり)が突然現れる。梨花は32歳。おばちゃんは、このままマサオと一緒にいると、20年後には大阪で経営するスナックでひとり寂しく死ぬ、というのだった。

 映画やドラマは、人格転換やタイムスリップに挑戦する。大林宣彦監督の「転校生」は、男子と女子が寺の階段を一緒に転げ落ちた瞬間に、入れ替わる。いまや名脇役となっている尾美としのり、と小林聡美が主人公を演じている。タイムスリップなら、「時をかける少女」である。

 「民王」は、社会的な地位がまったく異なる父子の物語である。第3話(8月14日)に至って、総理の武藤(遠藤憲一)の政敵である憲民党の党首である、倉本志郎(草刈正雄)までもが、女子大生の村野エリカ(知英)と人格転換していることがわかる。

 ふたつの人格転換が、二重らせんのようにドラマを進めていく。

 さらに、ドラマは武藤の民政党と、倉本の憲民党の戦いを描きながら、政界のパロディーになっている。そして、人格転換のドラマとパロディーが重なり合って、SFコメディーになっている。

 総理を務めることになってしまった、大学生の翔(菅田将暉)は官房長官の狩屋孝司(金田明夫)と、第一秘書の貝原茂平(高橋一生)に助けられながらさまざまな困難を乗り切ろうとする。父親の武藤も手取り足取りの指導をする。

 しかし、最後は三人の操り人形であることをやめて、翔が本来持っている優しい人柄と、自分の言葉で問題を解決する。どうしようもない出来損ないの息子が、いったんは窮地に追い込まれながらも、それを跳ね返す場面が心地よい。

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