この熱き人々

2015年10月4日

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吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

ロールケーキブームの火付け役であり、パリの「サロン・デュ・ショコラ」ではベストショコラティエに選ばれた実力。
人々を魅了するスイーツを次々に生み出す豊かな発想の源は、路地裏で無心に遊んだ少年のころのままの柔らかな感性にあった。

 大阪駅から福知山線で新三田(しんさんだ)駅に。さらに車で10分ほど。遠くに六甲山系の山々を望むのどかな新興住宅地に突如列をつくる人の姿が……。そこが目指す「パティシエ エス コヤマ」だった。まだ午前9時過ぎ。10時の開店前にやってくる人たちのお目当ては、ここでしか手に入らない「小山ロール」。1日1600本売り上げた記録をもつ小山ロールの人気は、いまだ衰えることを知らない。

ロールケーキブームの先駆けとなった小山ロール

 店の入り口へと誘う葡萄棚の小道に咲く季節の花々や銅製のオブジェが、待つ時間をなごませてくれる。裏側に回ると、パン専門店、マカロンとコンフィチュールの専門店、子どもしか入れない「未来製作所」、ショコラ専門店「ロジラ」などが隣り合い、お菓子の国に足を踏み入れた気分になる。並ぶ大人と遊ぶ子ども。漂う甘い香り。そろそろ開店時間。行列も動き始めたころ、小山進はお菓子教室でノート片手の受講者たちの前に立つ。

 午後、やっと時間ができた小山がロジラに現われた。洞窟のような入り口、床下にはゼンマイ仕掛けの大きな時計が埋められ、入った人が驚きの目を見開く。

 「世の中にモノがあふれ、こういうものがほしいというニーズもウォンツもわからんようになった時代に、ここや!と僕なりの感覚と切り抜き方でお菓子を作っているんです」

 その感覚の原点にあるのが、家に帰ることも忘れ、誰かに話さずにはいられない心弾む体験をした幼いころの路地裏での遊びの時間と、映画の「ゴジラ」。路地裏とゴジラで、ショコラの基地を「ロジラ」と命名した。

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