WEDGE REPORT

2015年8月25日

»著者プロフィール

 商品開発などの上流部門と、流通・メンテナンスなどの下流部門に比べて、付加価値が低いとされる部品生産・組立などの中流部門。これは「スマイルカーブ」として知られている。制御盤の設計・製造を行う三笠製作所(愛知県犬山市)は、このスマイルカーブの常識を打ち破ろうとしている。

曲線が笑ったときの唇の形に似ていることから、「スマイルカーブ」と呼ばれる。

 制御盤とは、FA機器、ロボットなどに電気を供給し、運転・制御するために必要な操作・保護・監視などを行う装置。基本的に三笠製作所は、装置メーカーなどからの発注に合わせて、制御盤を作る。スマイルカーブでいえば、発注側は上流部門であり、三笠製作所は中流に属することになる。「我々にとって、発注メーカーは神様でした」と、石田繁樹社長は苦笑する。

 しかし、三笠製作所は新しい業務の構築により、上流部分(図の☆部分)、下流部分(図の★部分)にも新たに属する事になった。上流部分では、ULの認証工場となることで、開発業務が法に則っているかを審査できることとなり、指導出来る立場になった。また下流部分では、海外の業務提携先と共同で世界中にアフターサービスが提供出来るようになったことで、業界で唯一無二の立場となり、顧客からの与信が増したのだ。

 2007年に中国での生産を開始するなど、従業員数25人(うちパート7名)という規模の中小企業のなかではいち早く海外展開を行った三笠製作所。以降、ドイツ、シンガポール、シリコンバレーと拠点を増やして行った。

 そうしたなかで、世界各国の制御盤のレギュレーション(規制)に対する知識をストックしていった。「輸入車と同じです。イタリアの自動車をそのまま日本で走らせることはできないので、日本のレギュレーションに合わせて改造されます。産業用機械装置でも同じことが必要になるというわけです」。当初は、国内のユーザーからの発注への対応が主流だったが、ここ数年、海外ユーザーからの発注も増えてきた。

 「それだけ国内で仕事がなくなってきているということです」と、石田社長は指摘する。国内の装置メーカーとしては、海外に販路を拡大したいが、そのための電気制御(制御盤の設置)について各国でどのようなレギュレーションがあるのか分からない。「逆に、うちなら分かりますけど」(石田社長)ということが増えていった。

 ここをチャンスと見た石田社長は、アメリカ保険業者安全試験書(UL認証=Underwriters Laboratories Inc.)が策定する製品安全規格の認定を取るべく動いた。規格にあった生産体制の構築など、認証の取得に向けては1000万円強の投資が必要になる。中小企業にとっておいそれと出せる金額ではないが、「今がそのタイミング」と、投資を決断した。

 「普通は1年半かかるところを、3カ月で認証を取得した」と、石田社長は胸を張る。大企業は自社製品を輸出するためにUL認証を持っているが、三笠製作所のような中小の制御盤メーカーが取得するのは2例目だという。

制御盤世界カンファレンス(サミット)を
東京・名古屋で開催

制御盤世界カンファレンスの告知チラシ
拡大画像表示

 「UL認証を得たことで立場が逆転しました」。これまでの力関係では、価格決定権は発注側にあったが、「ここの国のレギュレーションに対応するには、これだけの費用が必要になります」と、三笠製作所側から価格を提示することができるようになったという。「中流は付加価値が低い、という常識を打ち破ることができました」。

 今や、「発注に対して見積もりを出すのが追いつかないほど」仕事が舞い込んでいるという。この勢いに乗って、石田社長が開催を計画するのが、「制御盤世界カンファレンス(サミット)」だ。10月13日に東京(品川)、15日に名古屋で開催する。国内外の業界関係者に「三笠製作所」をアピールする狙いだ。提携するドイツ、イタリア、アメリカの技術者をゲストスピーカーとして招くほか、独・シーメンスなど欧州の大企業からの協賛・ゲスト参加も決定している。会場内には協賛企業の各海外制御メーカーの展示ブースを設け、見学ができると共に協賛企業のスピーチも聴講できる(※参加費は無料)。

参照:制御盤世界カンファレンス in 東京&名古屋

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る