2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年9月4日

 米ブルッキングス研究所のジョナサン・ポラック上席研究員とフィリップ・ル・コレ客員研究員が、同研究所サイトに7月29日付で掲載された論説にて、中国が経済面で欧州に進出していること、それが時には欧州分断につながっていることを指摘し、欧州は団結し、欧州の価値観に基づく対応をすべきである、と論じています。

画像:iStock

 すなわち、李克強首相は6月、7月、欧州を訪問した。中国はその国益伸長のためにアジアでの南シナ海での動き以外の方策も執っている。李首相はギリシャにユーロ圏にとどまるように呼びかけた。ギリシャ危機の世界金融などへの危険を認識している。

 中国の欧州におけるプレゼンスは2008年の金融危機後、加速的に増大した。中国は米国債以外に欧州債も買いはじめ、ギリシャのピレウス港の一部を35年租借した。

 EU・中国の貿易額は毎日10億ユーロを超える。

 欧州にとり、欧州が育成してきた規範や慣行にEU・中国関係を適合させることが戦略的な課題である。知的財産権の尊重など、諸問題があるが、最重要な問題の一つが3150億ユーロの「戦略投資のための欧州基金(EFSI)」である。中国は「一帯一路」計画に補完的とみて、その二つを結び付けようとしている。しかしEUは中国の中欧・東欧への進出にいらだっており、中国の大構想への賛同には限界もある。

 欧州の指導者は人権、NGO活動への制限なども、無視できないと考えている。

 南シナ海については、EUはここ2年二つの声明を出しただけであるが、欧州諸国は海洋法を重視している。南シナ海情勢は北極海、さらに地中海にも影響があるとみている。

 経済関係の深まりとは裏腹に、欧州諸国のアジアにおける安全保障面での役割は小さい。中国は欧州各国に個別にアプローチ、各国を分断しようとしている。独、英、仏は首脳がダライ・ラマと会った後、経済的損失を蒙り、ノルウェーは劉暁波へのノーベル賞授与で罰せられた。


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