WEDGE REPORT

2015年8月31日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。1972年共同通信社に入社、経済分野を取材し編集委員などを経て2010年に退職し、現在は経済ジャーナリスト。

 中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)が6月に設立されたことから、今後は日本のゼネコンなどがアジアの新興国のインフラを受注するのが不利になるのでは? と指摘される中で、日本は官民挙げてアジア・アフリカ諸国などのインフラ受注に力を入れる。大手ゼネコンは「AIIBの動向は注視する必要があるが、アジアの旺盛なインフラ需要に対して日系ゼネコンの受注量はわずかで、今後、伸びる余地は大きい」と指摘、AIIBが事業を開始しても、海外のインフラ受注は増えるとみている。

政府が本格支援

 アジア開発銀行(ADB)が試算した2010年から20年までの11年間のアジア域内のインフラ投資額は約8兆ドル(約960兆円)で、スピードは落ちてはいるものの経済成長が続いているアジアの新興国での橋、鉄道、ダム、港湾、空港などインフラ需要は引き続き旺盛だ。これまではADBや世界銀行、日本の円借款などの資金を使ってインフラ建設が進められてきたが、来年以降にはこれにアジア、欧州など57カ国が参加したAIIBの資金が加わる。

 政府は13年3月に「経協インフラ戦略会議」を立ち上げ、「アジアを中心とした新興国の成長を取り込み、日本経済の活性化につなげる」として、新興国のインフラ受注を後押しする姿勢を鮮明にした。AIIBの設立が決まった今年5月には安倍晋三首相は講演で、公的資金によるアジア向けのインフラ投資を今後5年間で約3割増やし、ADBや政府開発援助(ODA)を通じた融資を含め約1100億ドル(約13兆2000億円)にまで投資を拡大すると発表した。AIIBに対抗したのは明白で、具体的には円借款やODAの増額、国際協力銀行(JBIC)を通じた資金供給などを行うと表明、日本ならではの質の高いインフラ投資を推進する考えを示した。

 新興国の現地でもインフラ受注支援のための官民が連携した会議が開かれている。「最後のフロンティア」と呼ばれる今後大きなインフラ需要が見込まれているアフリカでは、7月にエチオピアとケニアで国土交通省の担当者と日本のゼネコンなどが出席してインフラ会議を開催した。会議では日本企業が受注に成功した事例などが紹介され、日本政府からは積極的に支援する方針が打ち出された。さらに国内では同月に新興国の大使などをゼネコンの本社や研究施設などに招いて独自の技術力を紹介するなど、インフラ受注につなげようとPR活動も熱心に行っている。

価格より技術力で勝負

 ODA案件の場合、受注できるのは日系企業に限るというものもあるが、そうでない場合は価格で受注業者が決まることが多い。ゼネコン各社の話を聞くと、中国や韓国は安い入札価格を提示したり、金利の低い融資を提案したりする。高い技術の必要のない道路舗装などの簡単なインフラ工事の場合は、日本勢に勝ち目はないという。

 ADBや世銀が融資する案件はすべて入札額によって決まる。日本はADBの最大の出資国にもかかわらず、ADB資金を使ったインフラ案件のうち日本の獲得比率は出資比率より大幅に低いことが指摘されるが、現状は価格だけの勝負のため日本のゼネコンはほとんど入札に参加していない。

 受注する企業の過去の実績や技術力が評価されることはあるが、案件の数はまだ少ない。国交省などはADBに対して、入札する際に受注者の技術力や過去の実績も評価するよう対話を進めており、価格一辺倒のやり方は見直されるかもしれないが、すぐには実現しそうにない。

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