2024年4月25日(木)

WEDGE REPORT

2015年8月31日

怖くないAIIB

 日本のゼネコンは、新興国の発注者に対して「初期のコストは高いかもしれないが、工期はきちんと守るし、完成した後の修理も少なく、長い目で見ればお得だと、『クオリティインフラ』(質の高いインフラ)を説明して分かってもらうしかない。良いものを工期内に安全に作る。AIIBがどう出てくるのか分からないが、このコンセプトは変わらない」(北直紀・清水建設執行役員)という。しかし、アジア諸国とのインフラの実際の商談になると、発注者の多くが工事費の安い方を選ぶという。

 清水建設は6月に、ベトナムのホーチミン市で高速道路公社から長さが2764メートルの長大橋梁ビンカイン橋の工事を207億円で受注した。同市内の交通渋滞の緩和と将来の交通需要増に対応するために建設される。主橋梁部分は軟弱地盤のため、これを克服する鋼管杭を打ち込む技術が必要で、この技術力が評価されて受注にこぎつけたという。しかも47カ月という短い工期での完成が求められている。このため同社は、高度の技術力が要求される長大橋梁や高架橋、大規模なシールドトンネルなどの工事の受注を目指すとしている。

清水建設が6月にベトナムの高速道路公社から受注したビンカイン橋の完成予想図

 インドネシアでのダム工事やエチオピアでの道路工事など海外で積極的に受注してきた鹿島の堀賢治・海外土木支店営業統括部長は「コスト勝負は日本のゼネコンのフィールドではない。技術を評価してもらえる入札に積極的に参加していく」と話す。だが、ゼネコンの中で高度の技術を持っている企業は限られるため、海外の案件で最終的に残る業者は日本の大手ゼネコンになるケースもあり、国内のゼネコン同士の競争が海外でも展開される事例もあるという。

鹿島が受注し建設中のインドネシアのカレベダムとエチオピアで完成した幹線道路
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 AIIBに関して堀部長は「ファンドの運営が不透明で、日本企業が受注できるような案件にはならないと思う。だからといってゼネコンが取り組む案件が減ることはない。日本のODAだけでも年間150~200億ドルの支援を行っており、世界のインフラ需要はいくらでもある。さらに、ベトナムのハノイの近くのラックフェン港のように、ODAと民間資金を組み合わせたPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)のような方式が広がってくれば、日本のゼネコンは活躍の場が拡大する可能性がある」と指摘、AIIBの登場を恐れてはいない。


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