田部康喜のTV読本

2015年9月3日

»著者プロフィール
著者
閉じる

田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 冷静沈着にして、ときに現場に自分をさらして、責任は自分がとる。それは日本の組織人の理想とする上司なのである。

 刑事モノに人気があるのは、単に推理ドラマの面白さだけではない。観客は自分の組織内の立場を登場人物たちに投影しながら、カタルシスを感じる。日常の鬱屈を解消しているわけである。

天樹の人生の謎 

 さて、「刑事七人」の天樹の人生の謎が、物語の縦糸となって、1話完結の事件解決のドラマの奥行を深くしている。

 事件解決に毎回鮮やかな手際をみせる、天樹がいったいなぜ10年間も遺失係だったのか。時間に極めて敏感なのに、時計は時々止まるような代物だ。

 7人のメンバーのひとりである、法医学者の堂本俊太郎(北大路欣也)との関係は。一人暮らしの堂本は自分で料理を作り、天樹を自宅に誘うのである。

 第7話(8月26日)に至って、ふたりが食卓を囲んだシーンから、カメラは壁に飾られている子どもが描いた絵に焦点があたる。そこには、堂本と思われる「おじいさん」と、パパ、ママそして子どもが描かれている。

 この回の事件は、パティシエ見習いの絞殺死体が発見され、その犯人として元タクシー運転手の木島義男(でんでん)が自首する。

 天樹は、一貫して時間の経過にこだわり、容疑者の木島が自首するまでの時間があまりにもかかっていることに疑問を抱く。木島が自宅に帰ってシャワーを浴びたと、取り調べに応えても浴室のタオルが濡れていないことに納得がいかない。

 木島の犯行を主張する同僚刑事の沙村康介(高嶋政宏)らに対して、係長の片桐は「納得ができない。お前たちは汗をかいていない」というのだった。

 ドラマは複雑な展開をみせる。末期ガンの木島は入院中に、殺されたパティシエ見習いのライバルである小石川美沙(高田里穂)が父親の見舞いにきたことがきっかけで、顔見知りになる。正式のパティシエになるコンクールを控えている最中に、美沙がパティシエとしては致命的な味覚障害であることを、木島は知る。

関連記事

新着記事

»もっと見る