競争激化するロケットビジネス
日本はスペースXに勝てるか?


中西 享 (なかにし・とおる)  経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。1972年共同通信社に入社、経済分野を取材し編集委員などを経て2010年に退職し、現在は経済ジャーナリスト。

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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人工衛星などを搭載して打ち上げるロケットビジネスの競争が激化してきている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は将来的に需要増が見込まれる大型静止衛星など打ち上げの受注も視野に入れ、2020年をめどに1号機打ち上げを行う次世代新型ロケット「H3」の開発のゴーサインを出した。だが、ビジネスとして成り立つためにはロケットの価格の引き下げと、諸外国の顧客からの多様な要求に応えられる厳しい対応が求められており、ビジネスに勝ち残るためには航空宇宙技術のさらなるレベルアップが不可欠だ。

日本の存在感

 JAXAは国際宇宙ステーション(ISS)に物資を届ける無人補給機「こうのとり」を積んだ大型ロケット「HⅡB」を8月19日に打ち上げ、予定の軌道に乗せることに成功し、ISSとのドッキングし無事に補給物資を届けられた。

「こうのとり」を積んだH-IIBロケット5号機(JAXA提供)

 エンジンなどが共通の「HⅡA」と合わせると、27回連続での成功で成功率は97%となり、米国やロシアのロケット打ち上げの失敗が続く中で、日本の存在感が増しており、ロケット売り込みのチャンスが到来している。このためJAXAはロケットの組み立てなどを担当しているプライムコントラクターの三菱重工業などと協力して、商業衛星を打ち上げるビジネスを狙いたいとしている。

 無人補給機は宇宙に滞在している宇宙飛行士に食料や水などを運ぶ役割で、これまで運搬した補給機としては米国のシグナスとドラゴン、ロシアのプログレスなどがあるが、昨年の10月以降打ち上げロケットの失敗が相次いだ。このため、米航空宇宙局(NASA)からISSの飲料水の確保のため、「こうのとり」に水再生装置などを運んでくれるよう緊急の要請があった。

 この水再生装置のフィルターがISSに届いたことで、ISSは継続した運用を可能とした。奥村理事長は打ち上げ後の記者会見で「外国の物資輸送が必ずしもうまくいかなかった事例があった直後だっただけに、大変大きなプレッシャーの元で仕事をした。そういった中できちっと打ち上げは成功したということは、我々のロケット打ち上げ技術の信頼性を外国から一段と高く評価してもらえるのではないか。

 将来の宇宙については、例えば火星に行くとか議論が世界でされているが、遠方に行けば行くほど、どこかベースになるところから物を運ぶというプロセスというのは必ず入るんだろうと思う、そういう中で、我々の輸送機あるいはそのベースキャンプとのドッキングの仕方、キャプチャの仕方、そういったものがますますもって有人宇宙探査の世界でその存在感が高くなっていくのではないかと考える」と述べた。

打ち上げ数を増やす

 日本の人工衛星の打ち上げロケットの開発は、1975年に打ち上げられた「N-Ⅰ」から始まったが、この時は国産ロケットの技術レベルは十分ではなく、第2段ロケット以外の部品は米国からの技術を導入して作られた。86年に試験機1号が打ち上げられた「H-Ⅰ」では約半分の部品が国産となり、9機が打ち上げられ、ロケット技術のベースを築き上げた。

 94年に打ち上げられた「H-Ⅰ」の後継機となる「H-Ⅱ」では第1段エンジンや固体ロケットブースタ(SRB)を国産化できたことで、ロケットすべてが国産化された。打ち上げ能力も4トンと大幅に向上、大型ロケットを自前で打ち上げられるだけの技術の蓄積ができた。

 2001年にはこれを改良した「HⅡA」を打ち上げ、外国の衛星を打ち上げできるまで技術が向上、現在までに28機打ち上げている。09年には「HⅡA」を一回り大きくした「HⅡB」が登場、今回打ち上げた「HⅡB」はロケットの先頭部分(フェアリング)の長さが15メートルもあり、より多くの物資を運ぶことができる構造になっている。

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中西 享(なかにし・とおる)

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