World Energy Watch

2015年9月11日

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英国のFIT大幅減額で痛手を受けるパナソニック

 英国では再エネ導入支援制度の一つとして、固定価格買い取り制度が導入されているが、消費者の負担額が過大にならないように、再エネ購入義務制度、差額保証制度と合わせ負担総額を英国政府が管理している。

 政府が今年7月に将来の負担額を予測したところ、20年~21年の負担額が91億ポンド(約1700億円)に達することになった。政府が負担可能としている上限額は76億ポンド(約1400億円)であり、20%も上回るため、政府はFITの大幅減額を来年1月から実施する計画を発表した。「再エネのコストの下落が続き、補助金なしでも再エネ業界の多くは生き残れる」とも政府は指摘している。小規模太陽光発電設備の減額の例を表に示したが、4kW以下の設備では減額幅が70%を超えている。

 この減額が来年1月から実施されれば、英国の太陽光発電設備の導入は壊滅的になるのは間違いないとされているが、9月6日付け「ガーディアン紙」は英国パナソニック幹部の苦境を訴える次の発言を伝えている「業界を生かして欲しい。飛べる前にヒナを巣から落とすようなことはしないで欲しい。FITの減額幅を見直す話し合いを、英国政府は業界と直ちに行うよう要請したい」。

 欧州では、再エネ事業者の苦境が続いているが、英国より早く再エネ制度の見直しを行ったイタリアでは、マフィアが再エネ事業者として活躍していた。

マフィアが活躍したイタリアの再エネ事業 

 2013年6月にユーロポール(欧州刑事警察機構)は、「イタリアの組織犯罪の脅威分析」とのレポートを出し、イタリアのマフィアが再エネ事業に携わっている実態を報告した。イタリアでは、日照時間が長い場所と風量が多い場所は、図‐2、図‐3の通り南部に集中している。南部は、図‐4のイタリアの4マフィア組織が活躍する場なのだ。

 米FBI(連邦捜査局)によると、マフィアは全世界に25000人の構成員を持ち、違法行為で年間1000億米ドル(12兆円)稼いでいるとされる。イタリア・シチリア島が発祥であり、イタリアでは違法行為で稼いだ金を、不動産、輸送、燃料、食品、宝飾、観光などの事業に投じている。そんななかで、優良な投資先としてマフィアが目を付けたのが、再エネだった。

 再エネ事業者を脅し、みかじめ料、用心棒代を巻き上げることも行っていたが、不法に稼いだ金を洗浄し適法の資金にする手段として風力、太陽光発電事業への大規模な投資を行ったのだ。設備に投資した違法な資金が、FIT制度により20年間の長期に亘り適法の利益を確実にもたらしてくれる投資は、マフィアにとって最適な事業だったと報道されている。

 ユーロポールが認識していたように、イタリアの司法当局もマフィアが再エネ事業に進出していることは把握しており、12年にはイタリア南部クルトーネにある風力発電設備が地元のマフィア組織ヌドランゲタに関係しているとし、3億5000万ユーロ(約470億円)の設備を差し押さえた。

 13年7月には潜入捜査の結果、シチリア島の30の風力発電設備の3分の1を保有し風力王と呼ばれていた企業家保有の設備が、地元のマフィア組織コーサ・ノストラに関連しているとして、当局は15億ユーロ(約2000億円)の設備を押収した。消費者が負担していたFITによる資金がマフィアに流れていたのは、大きな問題とされたが、マフィアも飛びついたイタリアの事業者においしいFITも見直されることになった。

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