長い自由時間を与えられたとき
人としての貴賤が露見する

地中海遥かなり(第11回)


高野凌 (たかの りょう)  定年バックパッカー

1953年生まれの62歳。横浜生まれ、神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

定年バックパッカー海外放浪記

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おじさん一人旅の孤独で地味な時間

 前回までの連載を読まれた方はオジサン・バックパッカーが面白おかしく海外放浪をエンジョイしているような印象を受けたかもしれない。しかし実際にそのように気持ちが高揚(in high spirits)している時間は全体の20%もない。残りの80%、すなわち大半の時間はかなり孤独で地味で退屈な旅である。交通機関の時間待ちなどは10時間以上となることは珍しくない。

 このような時間に過酷な気候、腰痛や筋肉痛などの肉体的苦痛などマイナス要因が重なれば気持ちが落ち込みがち(in low spirits)になる。この80%の時間を有意義に充実して前向きに過ごせるか否かがバックパッカーの一人旅の成否を分ける。

イースター明けの埠頭にて

 4月7日正午 イースター明けのロードス島からクレタ島への移動開始。当日安宿を12時前に追い出されたが、クレタ島行フェリーの出帆時刻は深夜1時過ぎ。フェリー出港まで最低13時間待ち。さらにクレタ島到着は翌日夕刻。

 安宿の主人のアル中親爺の機嫌を取りながら12時ギリギリまで粘って、移動中の四食分の弁当をゴキブリが這い回りゴミが散乱する共同キッチンで準備。弁当といってもイースター期間中は店が閉まっていたので食材はサラミソーセージ、魚の缶詰、瓶詰のトマトソースくらいしかない。他にキッチンに誰かが置いて行ったスパゲティ、玉葱、人参があった。これで多少中味の異なるスパゲッティを二種類作成して四つのタッパウェアに詰めた。

ロドスタウンの安宿の親爺(右)と英国の不良中年(左)

 イースター明けでレストランやバーなど店は全て閉まっている。仕方なくフェリー乗場に行くことにした。港までの道は昼でも人通りが殆どない。城壁と倉庫で死角になった小路にさしかかったとき、後ろから来た風体の怪しい黒服の男が足早に追い越していった。このまま直進すれば黒服男が待ち伏せしているかも知れない危険ゾーンに踏み入れると咄嗟に判断。Uターンして、遠回りになるが浜辺の遊歩道を足早に歩く。振り返ると黒服男が待ち切れずに横道から顔をのぞかせて口惜しそうに当方を見ていた。

 遊歩道に出ても周辺に人影がない。黒服男が近道を通って先回りする恐れがあったので、とにかくフェリー乗り場まで急いだ。深夜1時の出港なので船客はまだ誰も来ていない。トレーラーが数台待機しているがドライバーの姿は見えない。とにかく桟橋にまったく人気がない。このまま待機して日が暮れたら危険だ。

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著者

高野凌(たかの りょう)

定年バックパッカー

1953年生まれの62歳。横浜生まれ、神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

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