2024年4月20日(土)

対談

2015年9月27日

木下 さらに80年代以降に入ると、日本は一般会計予算による公共事業だけではなく、財政投融資をどんどん拡大させていきます。日米貿易摩擦を受けての日米構造協議で、内需拡大のために約束された取り決めでもあったんですが、これによって地方でもバイパスが立て続けに建設され、公共施設の郊外移転が増えていったわけです。しかしこれらが、人口縮小社会の到来が見えていたにも関わらず進められたことは、長い目でみるととんでもなく社会に負債を積んでしまったといえます。

久松 すごい話ですよね。農業でも、JAの融資審査が信じられないくらい緩かったりします。過去3年間の決算書を出すだけだから、親に小遣いをせびるよりも簡単で、こうやって貸してきたんだと思うと恐ろしくなる。表面化していない不良債権は膨大にあるはずなんだよね。

木下 拡大局面では隠せたものが、縮小局面ではどんどん表面化していってしまいますよね。見えないバランスシートに負債を載せることができるシステムは、本当に恐ろしい。一般会計と特別会計との付け替えで、黒字であるかのように装ったりできてしまうんですから。

久松 民間には真似できない技ですよね。担当者が異動になるまでの間、乗り切れればそれでOKなんですよね。

なぜ自治体は地域を「経営」できないのか

久松 自治体の行政マンで、自治体の経営学を学んでいる人はごく少数なんですか?

木下 そうですね。公務員試験には選択科目で経営に関するものもあるらしいんですけど、ほとんど表面的な知識を問うもので、重要科目ではないようです。行政学的な制度に関わることばかりを重視してやってきたので、仕方ないといえば仕方ないですよね。でも自治体経営が切迫するなかでは、今後はもっと執行業務と自治体経営の関係を、数字の面から判断できる人が必要なんですよね。試験や採用ではそこが重視されていないので、むしろ経営や数字が苦手な人が採用されている場合が多い。行政でも年長世代は「苦手」どころか、そもそも経営という考え方に否定的な方もいますから、現場は今後ますます壁にぶつかると思います。

久松 なるほどね。10万人から30万人くらいの規模でマーケットを作る仕事は、難しいだろうけどものすごくクリエイティブな仕事だとも思うんですよ。たとえばイオンが各地のロードサイドに「まち」を作って――成功しているといえるかどうかは議論があるけど――まがりなりにも経営を成り立たせているのに、自治体にそれができないのはなぜなんでしょう?


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