2024年4月25日(木)

対談

2015年9月28日

木下 まったくその通りです。雇用の改善ばかりが課題にされがちですけど、雇用の見た目の数が増えても、生産力が上がっていなかったら、その雇用はブラックな質になりがちです。地域活性化の分野でも、制度による地域雇用が非正規かつ低報酬で、頭数の人口だけ嵩上げしようとしているだけということがけっこうあります。人の「頭数」ばかりみていて、生産力や生産性という視点がないからなんですよね。

 雇用は重要な指標ですが、その中身を見ないのは典型的な部分最適です。税収からの予算で雇用を増やしても、生産力が上がっていなかったら、結局は地域の財政負担を拡大し、収支としてはむしろマイナスです。目的と手段をはき違えてしまっている。

 企業であっても、事務員が定年退職したからといって若い社員にそのまま引き継いだらダメなんですよ。退職を契機にオンライン化や統合化を進めれば、社員を営業などのもっと前向きな部門に使える。定年退職した社員の給料が、攻めの予算に生まれ変わるんです。

久松 人にしかできないことをやらないといけないですよね。誰でも事務作業に時間を使うことは、コストなんだと思わないといけない。

木下 僕らのAIAでも、販売しているドキュメントは全部オンライン決済で、かつ自動コンテンツ配信です。久松農園さんもクレジットカード決済ですよね。これまでのように振込にしていると、入金確認や通帳記帳に工数がかかってしまう。その事務コストをまかなうためには、当然ながら膨大な量を売る必要がある。

 人件費と物件費ほどコストが高いものはなくて、地方は物件費は安くても、人件費が劇的に安いわけではありません。無駄なコストをかければ量を売らなければならなくて、結局は量の競争に巻き込まれてしまうんです。それでは地方の中小零細事業では太刀打ちできません。地域であれ個人であれ、いろいろな不利を自覚する人ほど、生産性を意識して無駄なことからやめて、量の競争の論理から抜け出さないといけないんですよね。

久松 それはきわめて大事なことです。スケールメリットにはいろいろなものがあるけど、ひとつは「大量の工数を抱えられる」ということなんですよね。もう、そんなものを抱えられるのは、大手と大都市以外にはない。地方こそ割り切らないとダメで、そこでITに発想が向かわないのは、真剣に考え抜いていないんですよ。クラウドサービスの組み合わせでどれほどのことができるのかを、みんな甘く見ているよね。凄まじい進化なんですよ。


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