対談

2015年9月29日

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「本当は困っていない人たち」は動かない

久松 利益率を上げないといけない。ストックよりもフローを重視しないと生き残れない、それは間違いないことです。でもね、農業をめぐる制度って、新規就農者に大きな農機を買わせたり、高スペックの栽培施設を作らせたりと、アセットの重い農業をやらせようとするんです。リーンスタートアップの真逆なんですよ。

木下 大きな計画を立てさせて、あとは補助金で支援してあげるという方式ですね。

久松 もう、全くダメだと思いますね。だってほかの業界を見渡すと、成功しているスモールビジネスなんて、いかに資産を軽くするかの勝負じゃないですか。これからマーケットがどうなるかなんてわかんないんだし。

木下 僕らが商店街の活性化事業をやるときに、既存物件のリノベーションを行うのは、何も古い建物が好きだからなのではないんです。すでに返済が終わっていて、躯体に投資せずにできるコスト上の優位性を重視しているからなんです。さらに古いからこそある独特な空間も活用して差異をつけ、マーケティング的にも優位性を出す。先に出店者を募集して、彼らが支払い可能な家賃を積算して、その金額×投資回収期間で初期投資金額を決めるんです。リノベーションへの投資の回収期間は4年以内で、中には1年半で投資回収したものもあります。投資回収のスパンが短いとオーナーも身軽なので、次々と攻めへの投資ができます。 

 でも、この利点があまり理解されていないんですよね。「リノベーション」をうたっているのに改装に補助金を入れて大規模な構造改築までしてしまったり、立派な内装でゴテゴテにしたりする。補助金を入れた分だけ改修費も使ってしまうから、家賃も高くしないといけなくなる。その結果、高い家賃では入居者も現れないから、今度は家賃にまで補助金を入れるようになる。結局、投資回収までに10年かかったりして、いったい何のための支援なのかと思います。このあたりについては、建築プロデューサーの広瀬郁さんとの共著『まちづくり:デッドライン』(日経BP社)にも書いているのですが、なかなかこういう経営モデルが理解されないんですよね。

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