2024年4月23日(火)

対談

2015年9月29日

久松 木下さんの話はお金の部分が整理されているから、面白いなあ。どの分野であれ大事なことで……農業再生もやってもらえませんか(笑)。お手伝いいただける部分がたくさんあると思うんですよ。

木下 ぜひぜひ(笑)。この前、大手広告代理店から脱サラして福岡と佐賀の県境の山の上で就農した人で、養鶏を中心に10年以上やってきた方と会ったんですが、彼は「周りの農家は困っていない」と言うんです。卵の納品先のそば屋さんと仲良くなって、「辛味大根を作れる人いないかな」と聞かれたので、近所の農家に話をもっていく。すると「ああ、余っている場所になら植えてもいいよ。でも、できなかったらごめんね」みたいな生返事が返ってきてしまう。「できるかできないか」を聞いているんであって、「できなかったらごめんね」なんて答えは求めていないわけですよね。困っていないから、農業が「業」ではなくなってしまっているんですよね。

久松 そうなんですよ。そういう人は、驚くほど困っていない。本当にノリが悪いんですよ。

木下 IT活用をしないのも同じですよね。困っていればあらゆる手立てを考える。限りある財をもっと効果的に使うために、圧縮できる経費を圧縮するとなれば、自然とITも使うはずなんですよ。だけど、「わからない」「面倒くさい」とできない理由を並べ立てる。

 これは行政も民間も同じですね。余裕があれば、わざわざ面倒なことはしたくない。僕だってそういう立場だったらそうなります(笑)。普段から真剣に考えていないからこそ、行政の予算が下りてくると、見せかけの実績を作りたいだけのコンサルやシンクタンクの食い物にされてしまう。

久松 本気でない人を本気にさせる方法なんてないよね。

木下 アメリカにはナショナル・トラスト活動を行う「ナショナル・メインストリート・センター」という団体があるんですけど、彼らはまちなかの再生事業もやっていて、そこのマネージャーと話したことがあるんです。彼らの再生は成功確率がすごく高いんですが、さっきの久松さんのお話と同じで「成功する地域でしかやらない」んです。段ボール三箱分もの地元経済分析レポートのフォーマットを用意してあって、それを書かないと彼らの支援事業にエントリーできないようになっている。それも書けないような人たち、つまり自分の地域の経済分析もできない人たちには、そもそも実行できる処方箋はないというわけです。日本でそんなことをやったら猛烈に非難されるでしょうけど、ナショナル・メインストリート・センターは実に1700もの中心部再生に携わっています。


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