世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年9月28日

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 米アトランティック・カウンシルのスタイン研究員が、民兵勢力の支援強化によってISISを抑えるという戦略は、幅広い政府をつくる真剣な努力がない限り、これら民兵勢力がISISに取って代わるだけになるという重大なリスクを孕んでいる、と8月25日付フィナンシャル・タイムズ紙で警告しています。

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 すなわち、空爆開始から1年、対ISIS作戦は、イラクのクルド人都市アルビールの防衛、シンジャールのヤジディ教徒の救出、ラッカ(ISISの事実上の首都)近郊へのクルド勢力の前進など、一定の勝利を達成した。

 ISISの支配が依然強固であること、米国の交戦規定が余りに厳しいことや空爆の数が少ないこと、イラク政府・クルド地方政府への武器供与不足などの問題があるが、もっと深刻な問題は、現場でISISと戦闘をさせる民兵勢力の強化策が無制約に行われていることだ。米国などと便宜的な同盟で結ばれているこれら民兵達はもともと厄介な勢力だ。彼らはイラクでは政府の権威に挑戦し、ある勢力は世界的に活動するジハーディスト運動に結びついている。

 イラクでISISと戦っているシーア勢力の指導者は、アバディ首相ではなく、イランやマリキ前首相と連携している。ラマディ奪還に当たっても、彼らは隠された目的のために行動しており、スンニの地域指導者には公然と敵対している。イラクのクルド民兵組織ペシュメルガは失地の回復やバクダッドとの係争地域の支配強化を優先している。

 シリアでも同様の動きが進行中である。米国はクルド人民防衛部隊(YPG)を支持しているが、彼らは、米国の空爆の支援を得て、トルコとの国境に沿って約265マイルに及ぶ地帯の支配を固めている。しかし、この強力な部隊の利用価値はもう終わりになるかもしれない。この勢力はアラブが多数を占める地域では歓迎されない。そのためにこれからは支配地域の拡大よりも現在支配する地域の支配強化に集中するだろう。さらにトルコは、非合法のクルド人組織PKK(クルド労働者党)と関連があるYPGを全く信用していない。

 トルコは、ゆくゆく北部シリアに対する一層大幅な空爆の前哨戦として、米国にインジルリク空軍基地の使用を認めた。両国関係は改善したように見えるが、対立は続いている。トルコは、アサド政権の転覆が国益とみなしており、民族主義系の「自由シリア軍」から 過激派の「アハラール・アル・シャーム」(アルカイダ系)までの多くの民兵勢力と連携してきた。アハラールと米国の協力はあり得ない。アハラールはシリア北部にトルコが設けたいとする非ISISの自由地帯の治安を担当すべく準備をしているようだ。アハラールは米が支援するYPGと敵対関係にある。

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