世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年10月5日

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 プリンストン大学のフリードバーグ教授が次期政権において早々に対中国政策を練り直す必要があるとする小論を、8月26日付ウォールストリート・ジャーナル紙に寄稿しています。

画像:iStock

 すなわち、過去四半世紀、米国は貿易と外交によって中国にエンゲージしてきた。それは民主主義的な政治改革に繋がるような傾向を助長し、既存の自由な国際秩序に利害関係を持たしめることを狙いとした。同時に、東南アジアにおいて有利なバランス・オブ・パワーを維持するための措置をとってきた。侵略を抑止するため地域の軍事力を強化し友好国との連携を強化して威圧の試みに対抗し、エンゲージメントが結実するまでの時間稼ぎをしている。

 エンゲージメントとバランスの維持は並行して機能する筈であったが、中国はより豊かに、より強くなったにもかかわらず、自由化するどころかその政治はより抑圧的で激しく国家主義的となっている。これは指導部の不安感と傲慢さの特異な組合せを反映する。習近平の登場以来、反体制派、人権運動家の取り締まりなど、締め付けは強化されている。

 一方、国内の基盤固めのため、アジアの既存の秩序に挑戦している。中国の沿岸の殆どの海域とその資源に対する権益の強引な主張はその最たるものである。また北京は米国の同盟関係に反対を強めており、アジアの問題は「アジアの人民」に任せろという習近平の言葉は、米国のプレゼンスが劇的に縮小され中国が遂に圧倒的な大国として現れるという彼のビジョンを明確にしている。

 エンゲージメントは中国を自由主義的な民主主義、あるいは既存の国際秩序の「責任ある利害関係者」に変えることにすら失敗している。この間、中国の軍事能力の劇的な拡大はバランスの維持をよりコストのかかるチャレンジングなものとした。「接近阻止/領域拒否」のための中国の核・非核戦力の近代化と拡大によって米国が西太平洋に戦力を投射して同盟国を守る能力について疑問が生じ始めている。中国は軍事能力の増大によって領有権に係る主張を押し付ける新たなオプションを手にしつつある。

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