メディアから読むロシア

2015年9月28日

»著者プロフィール
著者
閉じる

小泉悠 (こいずみ・ゆう)

財団法人未来工学研究所客員研究員

1982年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。民間企業を経た後、2008年から未来工学研究所。09年には外務省国際情報統括官組織で専門分析員を兼任。10年、日露青年交流センターの若手研究者等派遣フェローシップによってモスクワの世界経済・国際関係研究所(IMEMO)に留学。専門は、ロシアの軍事・安全保障政策、軍需産業政策など。著書に軍事大国ロシア』(作品社)、『プーチンの国家戦略』(東京道堂出版)『ロシアの軍事情報を配信するサイト「World Security Intelligence」(http://wsintell.org/top/)を運営。

 前回の小欄(「『イスラム国』の脅威に相乗りしようとするロシア」)では、タジキスタンで開かれたCSTO(集団安全保障条約機構)首脳会議でのプーチン露大統領の演説のうち、前半部分を取り上げた。ここでは、中央アジアの内政不安と「イスラム国(IS)」の脅威を結びつけることで旧ソ連諸国への軍事的影響力を確保しようとするロシアの思惑を紹介した。

 後半では、プーチン演説のテーマは中東に移る。中東地域に関してもプーチン大統領が強調するのはやはりISの脅威だが、当然、そこには異なる思惑が働いている。まずはプーチン大統領の演説後半を見てみよう。

9月21日、モスクワを訪問したイスラエルのネタニヤフ首相と会談するプーチン大統領

 「シリアとイラクの状況についても思い起こしていただきたいと思います。これはアフガニスタンの状況と同様に我々の懸念を呼ぶものです。この地域について、個別に二つ述べさせていただこうと思います。まず、シリアを巡る状況についてです。

 この問題は大変に深刻です。いわゆるイスラム国は、イラクとシリアの広大な領域を支配しています。テロリストたちはすでに、メッカ、メディナ、エルサレムにも手を出すのだと公然と述べています。彼らの計画では、ヨーロッパ、ロシア、中央アジア及び東南アジアにも活動を拡大することになっています。

 ごく当たり前の理性的な考え方に、そしてグローバル及び地域的な安全保障に対する責任に従うならば、国際社会はこの脅威に対して団結せねばなりません。

 世界の多くの国々から参加した戦闘員に対し、ISがイデオロギー的教化や軍事訓練を行っていることは、さらなる懸念を我々にもたらしています。そして残念ながら、その中には欧州諸国、ロシア連邦、多くの旧ソ連構成共和国の出身者が含まれています。そして我々はもちろん、彼らが我々の領域内に帰還してくることを恐れています。

 地政学的な野望をはねつけ、いわゆるダブル・スタンダードや、特定のテロ集団を使って気に入らない政府や体制を倒すなどして有利な情勢を作り出そうとする政策を否定せねばなりません。

 ご存知のように、ロシアは過激主義に対抗する広範な連合を至急結成するよう提案しています。これはテロとの戦いに参加する準備がある、またはすでに参加している全ての当事者(イラク軍やシリア軍のように)を糾合するものでなければなりません。我々はテロリズムによる侵略に対抗するためにシリア政府を支持しているのであり、必要な軍事技術上の援助を行っており、これからも行っていきます。他の諸国も我々に合流してくれるよう呼びかけます。

 シリア政府及びシリア軍の活発な関与がなく、シリア領における「イスラム国」との戦いにシリア軍が参加していなければ、テロリストを追放することもできなければ、多民族・多宗教のシリア国民を破壊、奴隷化、残忍さから守ることもできません。

 もちろん、この国を政治的に変革することについても考慮せねばなりません。そして我々は、アサド大統領がこのプロセスにおいて、政府指導部内に反政府勢力及び反政府軍の健全な分子を政府指導部内に招き入れる用意があることを知っています。

 しかし、前述の計画においては、テロとの戦いに努力を結集することが必要です。それなくしては、現に我々が目にしている難民問題を含め、深刻化し続ける喫緊の問題を解決することはできません」

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る