患者もつくる 医療の未来

2015年10月13日

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勝村久司 (かつむら・ひさし)

高等学校地学教諭、元厚生労働省医療安全対策検討WG委員

1961年生まれ。京都教育大学理学科卒業。高等学校地学教諭。1990年、陣痛促進剤による被害で長女を失い、医療事故や薬害などの市民運動に取り組む。厚生労働省の中央社会保険医療協議会や日本医療機能評価機構の産科医療補償制度再発防止委員会などの委員を歴任。2015年8月より群馬大学附属病院で腹腔鏡等で死亡事故が相次いだ事件の医療事故調査委員に就任。著書に『ぼくの星の王子さまへ』(幻冬舎文庫)、共著書に『どうなる!どうする?医療事故調査制度』(さいろ社)など。

(5)事故報告書は確定する前に遺族に見せる

 事故報告書が完成したら、遺族にそれを渡した上で説明することは必須だと思いますが、報告書をみたときに、その調査の前提となっている事実経過の認識に遺族が大きな違和感があったり、遺族が気になっていた論点が取り上げられていなかったりしたら、報告書全体への不信感が生まれるのは避けられません。

 そのために、ある程度、医療事故調査の中間報告ができるようなタイミングや、最終の報告書のドラフトができた段階などで、事実経過や論点に違和感がないかどうかを遺族に見ておいてもらうことは、事故調査をする側が何らかの勘違いの上で調査を進めてしまっていないかをチェックすることにつながり、とても重要です。遺族も、そのようなチェックをしたい旨を伝えておきましょう。

 「もう、報告書の文言は一切変更できません」「事故調査委員会は解散しました」という段階で報告書を持って遺族に説明するだけでは、もし、事実経過が間違っていたり、論点がずれていたりした場合には、どれだけ科学的かつ論理的な報告書であっても意味はありません。

(6)再発防止策が実際に進んでいるかを確認

 医療事故調査は、再発防止が何よりの目的です。遺族にとっても、家族の命が再発防止に生かされたと実感できることが、心の整理にはとても重要です。そのために、再発防止策は、少しでも事故の減少につながる可能性があれば、多方面から指摘しておくことが必要です。

 そして、事故調査委員会は、再発防止策を報告書に記載して終わってはいけません。その再発防止策が、どのように具体的に現場で生かされているか、改善策がどのような形で進められているかを確認する作業も必要です。再発防止策の中には、現実的にも物理的にも、すぐにドラスティックに変えることが難しいこともあるかも知れません。しかし、だからと言って何もしないのでは意味がありません。少しずつでも、改善を進めていく努力が現場でなされているかどうかを確認し、その結果も、遺族に報告することが必要です。

 再発防止策が記された事故報告書の説明後、しばらく経ってから、遺族に対して、実際にその再発防止策が進んでいるという結果の報告がされたときには、遺族は医療機関に対して感謝と激励の言葉を発するでしょう。

 そこまでの報告がなされて、はじめて、遺族にとっても社会にとっても信頼のおける事故調査となるのです。

  
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