WEDGE REPORT

2015年10月12日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

 米カリフォルニア州が全米で最も強力な「男女賃金平等法」(カリフォルニア・フェア・ペイ・アクト=California Fair Pay Act)を10月6日に可決させ、来年1月からの施行が決定した。ジェリー・ブラウン知事は同法案について「雇用の上での男女差別を撤廃するための重要なマイルストーン」とコメントした。

California Fair Pay Actが可決したことを発表するジェリー・ブラウン・カリフォルニア州知事(Getty Images)

 法案にはカリフォルニア州商工会議所、州共和党議会なども賛同。米国中の女性権利団体も「他州のモデルとなり、連邦下院議会の今後の法案作成にも影響を及ぼす」と高く評価している。

 現在でも連邦法、カリフォルニア法ともに「同じ職業に対し、雇用者が女性の給与を男性より低く定める」ことを禁じている。しかしカリフォルニア州の正規雇用者の給与を見ると、男女の比率は100:84で、女性が低い。

 新法案では「雇用者は基本的に同じ内容の仕事に対し、男女間での給与差をつけること」を禁じている。例えば職業タイトルや勤務地が異なったとしても、職務内容がほぼ同じであれば、女性は雇用者に対し給与格差の是正を求める権利を有する。また労働者側が雇用者に給与情報の開示を求める権利も認められる。

 労働者側が給与格差に不満を持つ場合、雇用側は「給与差が仕事の熟練度や成果によるもので、性差によるものではない」ことを証明しなければならない。

カリフォルニアからビジネスが他州に流出する危惧

 法案を賞賛する声もある一方で、「このような法案は不要な労働者による雇用者の提訴をもたらし、結果としてカリフォルニア州から多くのビジネスが他州に流出する恐れがある」との懸念もある。

 問題なのは「同じ内容の仕事」の定義だ。例えば複数の店舗を持つ小売店で、治安の良くない場所に勤務する男性と治安の良い場所を希望する女性でも、仕事内容がほぼ同一であれば雇用者は給与差をつけられない。深夜シフトを男性がこなすことが多い場合も同様だ。こうなると男性従業員側の不満が高まる結果になる。

 もっと頭を悩ませているのはハリウッド。「男優」「女優」、映画の主演、という「同じ内容の仕事」でギャラに差をつけることは違法となるのか。歴代で最高のギャラを受けた俳優はレオナルド・ディカプリオ(7700万ドル)以下、5位までが男優で、6位にアンジェリーナ・ジョリー(3000万ドル)となっている。

 ハリウッドでは女性監督グループが映画、テレビ会社を「男女雇用、給与差別」で訴えた過去がある。脚本、編集、音楽など、エンターテイメント分野にもこの法案が適用されるのか。

 南カリフォルニア大学法学部講師で雇用法専門弁護士でもあるアル・レイサム氏は「フォーチュン500を含む多くの企業が、今後カリフォルニア州内で新規オフィスを開設するのを避けるようになるだろう」と語る。「同じ内容の職業」という定義のあいまいさ、職能給の差を雇用側が「合理的に説明する」責任など、雇用側の負担が大きい、というのがその理由だ。

 カリフォルニア州では昨年、投資銀行を解雇された女性が「男女差別」を訴えて裁判を起こし話題になった。「勤続年数も学歴も自分より低い年下の男性が自分より高い給料を貰っている」という訴えは各地で起こされている。今回の法案はこうした女性達の味方となるのか、あるいは州内の雇用に無駄な混乱を招く結果となるのか。施行される来年1月からの動きに注目が集まりそうだ。

  
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