2024年4月25日(木)

Wedge REPORT

2009年10月6日

 同プロジェクトは世界最大の資源企業、BHPビリトン、モザンビーク政府、南アフリカ開発公社との共同事業で、三菱商事は25%出資している。総事業費は19億ドルで、原料のアルミナは豪州から調達。南アの安い電力を使って製錬するスキームだが、アルミ生産量は年産56万トンと世界最大規模、製品は「欧州を中心に供給している」(是永上席顧問)。

 モザール成功の理由を、三菱商事は「BHPビリトンという優良なパートナーに恵まれたことに加え、国際協力銀行(JBIC)や国際金融公社、南ア開発公社などの国際金融支援が得られたから」(同)と強調するが、このプロジェクトには「アフリカでビジネスを継続するうえで無視できない実践」(平野克己アジア経済研究所地域研究センター長)があると言われている。それは徹底したCSR(社会貢献)活動だ。

 モザールの従業員は約1100人で、95%がモザンビーク人。周辺従事者を含めると1万人近い雇用があるが、「(事業を継続するため)従業員に対するマラリアやHIV防止などの衛生対策、識字率引き上げなどのための教育支援、農耕など小規模事業支援を実践している」(是永上席顧問)。支援事業は株主によって組成された非営利団体「モザール地域発展基金」によって運営されているが、拠出額は毎年5億円に上りCSR活動といっても半端ではない。

 三菱商事のアフリカビジネスの年間取扱い額は1000億円レベルと、日系企業の中ではトップクラス。是永上席顧問も「この10年間で扱い額は7倍以上に」と胸を張る。

 住友商事も4月、全社横断の「アフリカ・サブサハラ市場開拓タスクフォースチーム」を設置、本格的な市場開拓に乗り出した。「アフリカの現状は30年前の東南アジア。横串機能を発揮して、まず社内でアフリカを知ってもらい、アフリカにも住商を知ってもらってビジネスにつなげたい」(長谷川真一サブリーダー)と意気込む。

住友商事がマダガスカルで建設中のニッケル精錬工場(写真提供:住友商事)

 こうした中、住商はアフリカの東側、インド洋に浮かぶマダガスカルでステンレスや電池などの原料となるニッケル、コバルトの大規模一貫生産プロジェクト「アンバトビー」を推進している。カナダの鉱山会社、シュリック社、韓国の国営資源会社「コーレス」などと提携し、内陸部の鉱山で採掘したスラリー状の原石を海岸部に建設する精錬工場で、年間6万トンのニッケルと同5600トンのコバルトなどに精錬するスキームだが、原石を搬送する全長220キロメートルのパイプラインや道路、鉄道、港湾設備、発電所などの大規模インフラ整備も併せて行う。総事業費45億ドルという巨大プロジェクトだ。

 同プロジェクトでも、三菱商事のモザールと同様に、テクニカルセンター建設などの国際レベルの教育システム構築や、農村開発・貧困緩和対策などCSR活動を展開することにしており、「現地の雇用創出とともに社会基盤のレベルアップに協力していく」(稲葉誠チームリーダー)方針だ。

 自動車や建設機械、プラントなど製造メーカーのアフリカ市場開拓にも力が入ってきた。中でも熱心なのがコマツや日立建機といった建機メーカー。「インフラ整備に加えて、鉱山開発用の大型建機の需要もこの先、拡大する」(平岡明彦日立建機営業本部長)という考えによる。

 日立建機では4月に欧亜部から独立させて「アフリカ戦略部」を設置、ビジネス体制を刷新し、ザンビアやガーナに支店を開設した。建機ビジネスにとって重要なのはアフターサービス体制の構築だ。エンジンや油圧機器が故障した場合、素早く修理できる体制作りが不可欠だが、そのためには現地要員に技術を取得させるトレーニング体制も必要。この一環として、現在、南アにトレーニングセンター開設を準備しており、「こうした体制整備によって売り上げ規模を現状の年300億円から倍増させたい」(平岡本部長)と言う。


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