サムライ弁護士の一刀両断

2015年10月22日

»著者プロフィール
閉じる

加藤一真 (かとう・かずま)

弁護士

敬和綜合法律事務所所属。
東京大学卒業後、2006年に弁護士登録。2013年、ベルギーのルーヴェン大学にてEU法の法学修士を取得。2014年まで米国ワシントンのクリアリー ゴットリーブ スティーン&ハミルトン法律事務所にて執務し、多くの国際カルテル案件に関与。日本に帰国後、独禁法、金融規制、EU案件を中心とした渉外案件に取り組んでいる。

 本年9月18日、ドイツの大手自動車メーカーであるフォルクスワーゲン(VW)が、そのディーゼルエンジンに搭載したソフトウェアによって排ガス規制を潜脱していた、との発表がなされた。それからわずか数週間しか経過していないが、この間各国の行政・司法・立法当局を巻き込んで、様々な動きが噴出している。本稿では、これらの動きについて整理する。

 まず事実関係を確認すると、VWの不正を最初に公表したのは米国環境保護局(EPA)である。そのプレスリリースによれば、VWのディーゼル車は、通常走行時には最大で基準の40倍ものNOx(窒素酸化物)を排出するにもかかわらず、不正なソフトウェアの使用により、試験時には排出基準をクリアする結果となっていた。VWも不正ソフトウェアを使用したことを認め、謝罪している。

不正を最初に公表した米国EPA。米国の隣国、カナダ政府は、「EPAと協力し、ディフィートデバイス装着の可能性のあるディーゼル車を、できるだけ早期にテストしていく」とコメントした(画像:iStock)

 この不正により、独VW、その子会社である独アウディ及び米国VWに対して、米国大気浄化法違反の疑いがかけられている。当初調査対象とされたのは、2009年から2015年までの年式の4気筒ディーゼル車であり、該当する車両は、米国で2008年以降、約48万2000台が販売されていた。

 その後VWは、不正ソフトウェアが搭載された車両が全世界で1100万台に上ることを明らかにして、これらにつき2016年1月からリコールを行い、同年末までに「修理」を完了させたいとしている(具体的にどう「修理」するのかも問題となるが、ここでは立ち入らない)。

日本では不正車両は正規販売されていない

 問題のディーゼル車は、オーストラリアで約10万台、韓国で4000台から5000台、中国で1950台が販売されている。しかし、日本では、VWのディーゼル車は正規販売されていない。そのため、日本に個人輸入されたVWのディーゼル車は若干あるものの、日本のVWに対する日本当局の動きは、少なくとも表面上は見られない。後述する米国のように、訴訟が起こされたということもないようである。

 むしろ、日本でディーゼル車を販売しているVW以外の自動車メーカーに対して、同様の不正がないかどうか、国土交通省が報告を求めるとしている。いわば、他社がVWの巻き添えを食っている格好である。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る