WEDGE REPORT

2015年10月23日

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 ロシア軍の介入でシリアの紛争が激化する中、隣国のイスラエルではエルサレム旧市街の聖地「神殿の丘」をめぐり、パレスチナ人との衝突が拡大、緊張が急速に高まってきた。このままでは、第3次インティファーダも懸念される事態だが、パレスチナ自治区ガザでは過激派組織「イスラム国」(IS)勢力も蠢き始めている。

パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区中部に位置するラマラでイスラエル兵士に投石を行うパレスチナ市民(Getty Images)

 

戦々恐々のユダヤ人

 昨年夏のガザ戦争以来、比較的静かに推移してきたパレスチナ人とユダヤ人の対立は9月に入って東エルサレム旧市街地の聖地「神殿の丘」などの立ち入りをめぐって先鋭化。パレスチナ人とイスラエル治安部隊の衝突が散発的に起こり、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸、ガザにまで拡大した。

 18日夜には南部ベルシェバの中央バスステーションでパレスチナ人の若者がイスラエル軍兵士から銃を奪って乱射。兵士と犯人の2人が死亡、十数人が負傷する事件が発生した。こうしたパレスチナ人がユダヤ人をナイフなどで襲う事件が10月に入って約30回も続発、これまでにパレスチナ人40人以上が死亡、ユダヤ人も8人が死亡した。ユダヤ人はいつ襲われるかと戦々恐々だ。

 「神殿の丘」は古代イスラエルの神殿があった場所。イスラム教の礼拝所「アルアクサ・モスク」や預言者ムハンマドが昇天の旅をした「岩のドーム」などがあり、ユダヤ、イスラム両教徒にとっての聖地である。ユダヤ教徒は現在、「神殿の丘」で祈ることはできないが、ユダヤ教徒の右派を中心に立ち入りを要求する声が強く、幾度となく双方の衝突の原因になってきた。

 特に2000年にはイスラエル右派政党リクードのシャロン党首が同地を訪れたのを契機に第2次インティファーダ(反イスラエル闘争)が起こり、数千人の死者を出した。ネタニヤフ政権はパレスチナ人の襲撃事件が日常的に発生していることから、東エルサレムの一部にパレスチナ人居住区と隔てる高さ10メートルの壁の建設を開始したが、「第3次インティファーダの始まり」と懸念する声も強い。

 今回、パレスチナ人がユダヤ人襲撃を激化させている背景には、中東和平交渉が暗礁に乗り上げて一向に進展せず、将来のパレスチナ独立国家の樹立に絶望感と不満がうっ積している状況がある。パレスチナ自治政府のアッバス議長は9月30日の国連演説で、和平の枠組みである「オスロ合意」にもはや拘束されないと言明し、和平の動きは一段と遠のいた形となった。

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