2024年4月20日(土)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2015年10月23日

 しかし、企業収益の目覚ましい回復に比べて、設備投資や雇用賃金の増加は鈍い。設備投資では、低金利、円安や景気の緩やかな回復が設備投資を押し上げて6年連続の増加となっている(図表3)。しかし、不透明感を強める海外経済の下では大きく増加するまでは至っていない。

 一人当たり名目賃金も、13年初以降上昇基調にある(図表4)が、回復は鈍く、一人当たり現金給与総額は1990年前後の水準に止まっている。国内で積み上げられた付加価値のうちどれだけの割合が雇用者報酬に振り向けられたかを示す労働分配率を見ても、主要国の中で日本が一番低い(図表5)。

投資・雇用拡大の局面

 ところで、近年の日本企業の収益動向を見るにあたって見落とせないのが利益に占める内部留保の割合の高さである(図表6)。2014年度の日本企業の付加価値額に占める内部留保割合は9.6%となっており、同暦年のアメリカ企業4.5%の2倍以上となっている。

 日本企業の利益に占める内部留保割合が高いということは、投資や雇用に積極的になれないことの裏返しでもある。したがって、少子高齢化が進み飽和している国内市場や不透明な内外経済など、投資や雇用を抑制する要因を改善しなければ企業の利益に占める内部留保割合は低下しないようにも見える。


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