チャイナ・ウォッチャーの視点

2009年10月8日

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有本 香 (ありもと・かおり)

ジャーナリスト

企画会社経営。東京外国語大学卒業後、雑誌編集長を経て独立。近年とくに中国の民族問題の取材に注力している。『中国はチベットからパンダを盗んだ』(講談社)『なぜ、中国は「毒食」を作り続けるのか』(祥伝社)の他、近著に『中国の「日本買収」計画』(WAC BUNKO)がある。

アフリカで襲われ、殺される中国人

 アフリカがらみでは、少し前にも興味深いニュースがあった。まずは去る8月3日、南部アフリカの国ザンビアで、中国人ビジネスマンがザンビア人に殺害された事件である。

 中国国内でも直ちにこの事件は報道された。とはいっても、特段に「ザンビア人けしからん」との論調ではない。

 この手の事件が珍しくないからである。近年とくに、アフリカを含む途上国で中国人や中国企業が地元民に襲撃される事件は多い。中国外交部の統計では、2006年、在外中国大使館が処理した事件は3万件にも上る。

 中には07年、エチオピアで、中国石化集団(シノペック)系列の油田開発現場が現地の反政府勢力「オガデン民族解放戦線」の襲撃を受け、中国人労働者を含む74人が殺され、中国人7人が拉致されたという大規模なものもある。

 しかし、こうした事件後も、中国政府とそのコントロール下にある中国メディアはつねに、「事件によって、中国の対外進出は何ら影響を受けない」と力説してきた。

 なぜか? 平たくいえば、国策として外国進出する企業とともに、労働者として当該国へ出ていく中国人民をビビらせないためだ。

 中国のアフリカ進出が国際社会から顰蹙を買っているのは、おもに2つの理由による。ひとつは、国際社会が制裁など課している政権を利することへの非難だが、もうひとつは、中国資本が進出しても現地人がさほど雇用されず、大挙して押し寄せる中国人労働者による資源の収奪、搾取が行われるのみだからである。

 中国は、10%前後に近い経済成長を何年も続けながら、数億人の国民が定職を得られないという特異な国だ。アフリカは、そんな中国人の有望な出稼ぎ先となっている。現在、アフリカには、資本家から肉体労働者まで75万人以上の中国人が居住しているという。

 記憶に新しい例では、08年の四川大地震の際、沿岸部の出稼ぎから帰郷し、元の出稼ぎ先に戻れなくなった農民工に、地元政府はアフリカへの出稼ぎを積極的に斡旋した。

 ほかに、典型的な「出稼ぎ者の発地」である河北省保定市周辺の農村部には、18歳以上60歳以下の男の大半がアフリカへ出稼ぎに行っている集落があるという。その保定出身の中国人農民らはザンビアで、「アフリカ保定村」なるものを創っている。

アフリカ人による中国への抵抗

 中国にとってザンビアは「古くからの友好国」だ。たしかに、ザンビア中部とタンザニアを結ぶタンザン鉄道は、毛沢東健在の1970年代前半に中国の資金で建設された。

 日本人の中には誤解もあるが、中国のアフリカ進出は何も、経済発展めざましい近年始められたわけではない。自国民は食うや食わず、自国のインフラ整備も日本のODA等に頼っていた70年代から、中国はアフリカに積極的な「援助」を行ってきた。

 一方、ザンビアは、アフリカでは比較的恵まれた国だといえる。独立後の内戦を経験せず、銅をはじめ鉱物資源が豊富で、野生動物が多く生息する自然も美しく残る。多民族、多宗教、多数政党が共存し、選挙も行われている。

 そのザンビアで、中国は何をしてきたのか?

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