江藤哲郎のInnovation Finding Journey

2015年10月30日

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江藤哲郎 (えとう てつろう)

ベンチャーキャピタリスト

 鹿児島県出身。1984年慶應大商学部卒業。同年(株)アスキー入社。86年マイクロソフト(株)設立に参加し、マーケティング部長代理としてWindowsコンソシアム、マルチメディア国際会議等を立ち上げる。

 92年(株)電通入社後、デジタル・コンテンツの開発とビジネス化を推進。2002年から情報システム局でSAPアジア共通会計システムを中国・アジアの30拠点に導入他、国内外の全システム開発を担当。2013年から経営企画局専任局次長として、電通が約4,000億円で買収したイージスとのグローバルIT統合の責任者。

 2015年7月、ワシントン州カークランドにInnovation Finders Capitalを設立。AI、ビッグデータ等スタートアップを日本と繋げる。家族は妻と一男。
 

 なぜシアトルで起業したのか? とよく聞かれる。シリコンバレーではないの? とも。実際私が1984年にアスキーの新入社員として初の海外出張で行ったのは、シリコンバレーとシアトルであった。自分としては両方に思い入れがあり、今日の様に発展して当たり前とも思っていた。特にシリコンバレーは人と技術と資本が集約され、世界のIT、いや今や新産業全体の中心と言って良い。ただし近年は沸騰状態にあり、物価や地代は鰻登り、ホテルも取り辛く、交通渋滞も酷い。人材確保のための引き抜き合戦は、過熱する一方だ。

シアトルのダウンタウン ©Naonori Kohira

 一方、シアトルはまだ成長カーブの端緒にある。全米で第2のシリコンバレーを目指す他の三都市NY、ボストン、テキサスとの競争が始まっているが、シアトルは環境の良さ、食べ物の旨さ、多様な文化などの魅力に惹かれ“クオリティ・オブ・ライフ”を求める人々と企業が全米から集まっている。

人材確保ために企業がシアトルに集まる

 アップル、イーベイ、フェイスブック、グーグル、オラクル、セールスフォース、ツイッター、ヤフー、スペースX。全てシリコンバレーの有力企業だが、近年シアトルとそのイーストサイド(レドモンド、ベルビュー、カークランドなど)に進出し研究開発や業務の拠点を築いている。なぜか? ひとえに人材確保のためである。進出した各社はもちろん1名単位の面接もするが、それでは需要に追い付かないため、主にマイクロソフトとアマゾンからレイオフされた事業部門、スピンアウトしたスタートアップなどを買収している。日系の任天堂アメリカ、独系はTモバイルもアメリカではシアトルに本拠を構えているため、ゲームや通信のスペシャリストが辞めて起業する例も多い。シリコンバレーで面接や引き抜き合戦をやるより、極めて効率的に優秀な人材をまとめ買いできる。慢性的な人材不足に悩む各社にとって、シアトルはシリコンバレーをも惹きつけ、人材獲得のブルーオーシャンとなっているのだ。

 ここでシアトルの歴史をその代表的企業群と共に少し振り返ってみたい。19世紀に港湾が発達し、日本から最も近いアメリカ西海岸の港として交易が栄えた。神戸市は姉妹都市だ。20世紀にボーイングがその本社と工場を置いた事で海と空のロジスティックスが強化され、関連する産業の裾野が広がり人材も多く集まった。コストコがカークランドの1号店を皮切りに世界に進出したのもこのインフラがあったからこそで、アマゾンがこの地で起業して大成長したのも地の利を十二分に活用したからと言える。

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