WEDGE REPORT

2015年10月27日

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 ウクライナ北部で29年前に放射能事故が発生したチェルノブイリ原発をめぐり、このほど、米科学誌に、原発周辺の立ち入り禁止区域内でシカやイノシシ、オオカミなどの野生動物の生息数が大幅に増加しているとする報告書が発表された。

事故から29年を迎えたチェルノブイリ原発(Getty Images)

 英紙ガーディアンは「この調査結果は、放射能による被ばくは、長期にわたり野生動物の生息数に影響を及ぼすとする当初の仮説に反駁している」と指摘。事故前はこの地域でみられなかったヨーロッパオオヤマネコやヨーロッパバイゾンも繁殖しているという。理由は自然環境に大きな負荷を加える人間がいなくなったこと。共同著者の1人は「人間がさまざまな原因で立ち去ったとき、その地域は野生の王国となる。たとえ史上最大の原発事故だったとしても」と話している。

 原発事故は1986年4月26日、ウクライナの首都キエフから北方約120キロ、ベラルーシと国境を接するチェルノブイリ(ウクライナ語:チョルノーヴィリ)で発生した。試験運転中に4号機が制御不能となり爆発、大量の放射能物質が放出された。ロシアを含む旧ソ連や欧州各国などに汚染地域が広がった。

 原発事故の深刻度を示す国際評価尺度は東京電力福島第一原発事故と並ぶ最悪の「レベル7」。原発職員や事故処理作業員が急性放射線障害で死亡した。原発の半径30キロ圏内が強制避難の対象となり、33万人が移住させられた。
来年で事故後30年となり、放出された主要放射性物質の1つ、セシウム137の半減期を迎える。4号機を覆う「石棺」が老朽化し、放射性物質が漏れている恐れがあったことから、現在、石棺にかぶせる鉄製アーチの建設が行われている。

 野生動物の調査は米英の研究者が中心となり、ベラルーシ側の立ち入り禁止区域内で行われてきた。その調査結果はこのほど、米科学誌「カレント・バイオロジー」に掲載された。

 研究者チームは当初の10年ほどはまだ放射線量が高いため、冬季に上空をヘリコプターで飛行し、野生動物の足跡を調べてまわった。20年が過ぎた2008年ごろからは地上に入り、野生動物の痕跡を採取するなどデータを集積、その上で、原発周辺で汚染被害が少なく、立ち入り禁止措置がとられていない地域との比較を行った。

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