世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年11月11日

»著者プロフィール

 米ヘリテージ財団のローマン(アジア研究センター長)が、同財団のサイトに米タイ関係についてはプミポン国王の死去という間近に迫った事態に配慮した長期的思考が欠かせないという趣旨の一文を10月5日付で書いています。

Getty Imagesより

タイ現政権に強硬姿勢で臨むオバマの思惑

 すなわち、タイ国王の命運は、今日のタイ政治の中心的要素である。

 タイでは幾多のクーデターが行われてきた。冷戦時代にはこの種の非民主主義的な行動に対し、戦略的な必要性から米国は見て見ぬふりをすることが多かった。2006年のクーデター当時には冷戦は終わっていたが、イラクとアフガニスタンにおける戦争を含む世界的なテロとの戦いという戦略的な構図があった。タイは諜報や米軍の兵站支援の面で重要な結節点であった。2014年のクーデター当時とその後の軍政については米国の反応を鈍らせるような同様の構図は存在せず、従って米国の対応は随分異なったものとなった。

 2006年のタクシン首相を追放したクーデターに対するブッシュ政権の対応は限定的で、法律上必要な軍事援助を停止したが、コブラ・ゴールドをはじめ共同軍事演習は予定通り実施された。これに対し、オバマ政権のタイへの対応は遥かに厳しい。軍事援助の停止のみならず、軍や警察の高位の交流、共同演習、訓練計画を停止した。最も顕著なのはコブラ・ゴールドの規模の縮小である。対応の違いは、戦略的なコストを伴うか否かに起因する。

 2006年と2014年のその他の違いとして、プラユット首相による軍事政権の方が、かつてのスラユット政権よりも強硬であることが指摘される。人権上の懸念も持たれている。民政への移管も遅延しており、新たな選挙は2017年の中頃に予定されている。

 この違いの理由は何か? プラユットが強硬姿勢なのは2006年にはなかった劇的で不確実な国内的力学によるものなのか? この問題はプミポン国王の健康問題に行き着く。国王の死は近代史に類例を見ない動揺をタイにもたらす。タイの軍部は国王の死を迎える時、状況を確固として掌握したいと欲しているのは明白である。軍部は恐らくどの程度「確固」たる必要があるかについて過大に考えている。しかしこれこそワシントンがタイの行き過ぎを防ぐため、静かに、効果的に注意を喚起する環境を整えるべき理由である。公に怒鳴り散らすことは不適当である。両国の信頼関係を回復するためにもクーデター以来途絶えている高位の対話を再開すべきである。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る