世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年11月12日

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 10月6日付の独シュピーゲル誌(英文電子版)は、シリアのアサド大統領がロシアに支援を請うた理由はイランにある、という同誌ロイター記者の解説記事を掲げています。

Getty Imagesより

“身内”の侵食に恐れをなすアサド

 すなわち、アサドがロシアに支援を請うた第1の理由は敵に対する恐怖にあるが、「これに続く理由は友人に対する恐怖である」とダマスカスの大使館に長く勤めたロシアの外交官が言っている。彼が言うには「アサドとその取り巻きはイランを怖れている。シリアを植民地の如く扱うイランの傲慢さに対する怒りもある」。

 イランの目標は単なる現状維持ではない。レバノンに接する国境地域をヒズボラに維持させるためシリアの正規軍と併存する形で、イランで訓練された数万の戦闘員を含む「国防軍」なるものを作った。しかし、この「国防軍」は今や分解して民兵として地方に展開し始めている。

 非軍事的分野でも著しい変化が生じている。ダマスカス、ラタキア、ジャブラなどで多数のシーア派の教育施設が開設されている。これら施設はスンニ派やアラウィー派をシーア派に改宗させることを狙いとしている。さらに、イランの密使がダマスカスの土地や建物を買い漁り、そこに他国からのシーア派を住まわせようとしている。

 何年も前にオランダに逃れて来たアラウィー派の男に言わせれば「アサドは戦闘員としてのイラン人を欲しがっているが、彼等はイデオロギー的に内政に干渉するようになっている。ロシア人はそういうことはしない」。そこでアサドは宗教的には問題のないロシアに命運を託すことにした。ISに対する戦いというのは口実に過ぎず、ロシアの空爆の対象は反体制派の地域である。

 こうしたイランの影響力を逆転出来るかは疑問である。ダマスカスの西北の都市ザバダニの一件がある。反体制派が支配下に置いていたこの町は、レバノンに接する国境地域全体を支配下に置くことを狙うヒズボラにとって最後の関門であった。7月にヒズボラはここに攻勢を仕掛けた。

 これに対し、イドリブの反体制派はシーア派の幾つかの町の砲撃を始めた。ここでイランが介入し、アサド政権を排除した形で反体制派と交渉を始めた。停戦合意の内容はアサドがのめたようなものではない。このことはイランがアサドの勝利を信じておらず、シリアの宗教的な浄化を含む国の分割が始まったことを示している。

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