WEDGE REPORT

2015年11月9日

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 ベイルートの情報筋は「エジプトの手荷物検査がずさんだったのは誰でも知っている」と述べ、「シナイ州」がスーツケースなどに爆発物を仕掛け、甘い検査を通り抜けて貨物室で爆破させた可能性が高いことを示唆した。

元輸入業者が指導者

 「シナイ州」は元々、アルカイダ系の「アンサル・ベイト・マクディス」(エルサレムの支援者)という組織。アラブの春の政治・軍事的な混乱に乗じてシナイ半島を中心に地元のベドウインと結び付いて勢力を伸ばした。そして昨年11月、ISに忠誠を誓ってその傘下に入った。

 同組織はエジプト軍の元特殊部隊の将校、ヒシャム・アシュマウイに率いられていたが、アシュマウイはISの傘下に入った際に組織を離脱、現在はアブオサマ・マスリという元衣料品輸入業者が指導者だ。マスリはカイロにあるイスラムの最高権威機関アズハルで学んだ経歴を持っているとされる。

 「シナイ州」はISに帰順して以来、一段と過激化し、7月にはシナイ半島北部の町などを襲い警官ら70人を殺害、カイロ近郊でクロアチア人を拉致して殺害するなど攻撃の対象者を外国人にも拡大していた。治安の安定を掲げるシシ政権は戦車や戦闘機を送って一掃を目指しているが、依然数百人の勢力を維持している。

 同組織は最初の声明で犯行の動機について、シリアに介入したロシア軍に殺害された同胞の報復のため、としている。ISはこれまでシリアとイラクの“領地”を死守することを優先し、各地の支部に指示してテロを起こすことは大々的にはやってこなかった。

 しかしISにとって、今回のテロがロシアに対するジハード(聖戦)の一環で、配下の分派組織を実行部隊として使って行ったとすれば、これを契機に本格的な国際テロに乗り出す恐れは強い。またISのテロと断定された場合、プーチン大統領が巡航ミサイルなどでISに対して報復に出る可能性も強まる。ISとプーチン氏双方の動きから当面、目が離せない。

  
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