WEDGE REPORT

2015年11月17日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

 カリフォルニア州は2006年以降、実質的に停止状態だった死刑執行を再開すべく、新たな法案を提出した。これまでの死刑執行法は3種の薬剤注入によるもの。米国では「死のカクテル」とも呼ばれるが、麻酔剤、筋弛緩剤、心停止に至る薬の3種で「死刑囚の苦痛を最も軽減する」とされる。

 しかし06年、カリフォルニア州地方裁判所で「3種の薬剤のうちどれかひとつがきちんと作用しないと死刑囚に多大な苦しみを与える」ため「同州の死刑執行法は憲法違反」という判決が下され、以来死刑執行が事実上不可能となった。

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 一方でこの判決を承服できないのが、犯罪被害者遺族らだ。過去9年間、カリフォルニア州では「死刑を執行すべき」という遺族らが州を訴える裁判が複数起こされた。

 これを受け、同州最大の死刑囚収容所であるサンクエンティン刑務所は09年「薬剤投与による死刑執行室」を新たに設置したが、これまで一度も使用されたことはない。

 しかし、06年以降も同州では平均して月に2人が死刑判決を受けている。このためサンクエンティン刑務所はまさにパンク状態だ。現在死刑執行を待つ囚人はなんと749人に上る。

 この事態を打開するため、同州は3種の混合法ではなく1種類の薬剤で死刑囚を死に至らしめる方法に転換する法案を提出したのだ。

死刑執行法が州によって異なる米国
電気椅子、ガス室、銃殺

 米国の死刑執行法は州によって異なる。現在死刑を存続しているのは31州で、すべてが薬剤投与を第一の手段として採用。しかし他の方法として電気椅子を認めているのが8州、ガス室が5州、絞首刑が3州、銃殺が2州だ。

 現在、3種混合の薬剤投与は全米で薬剤の不足に悩まされている。主に欧州の製薬会社が「死刑は非人道的」として必要な薬剤の製造を停止したり米国への輸出を禁じる措置を取った。国内でも生産が行われておらず、一時は「中国からの輸入」も検討されたが「品質に問題があり、死刑囚を無駄に苦しめる結果となる」という議論が巻き起こり実現できていない。

 そこで10年以降、8つの州が3種ではなく1種の薬剤による方法に切り替えた。今回のカリフォルニアを含めた6つの州が同様の変換を提議しているが、心停止に至る薬剤に何を選ぶのか、など議論すべき点は多い。

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