世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年11月23日

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 10月19日のカナダ総選挙の結果、全議席338の内、自由党184議席、保守党99議席、新民主党44議席、ケベック・ブロック10議席、緑の党1議席となりました。10年ぶりに政権が交代し、ピエール・トルドー元首相の息子、ジャスティン・トルドーが首相になることになりました。

ジャスティン・トルドー氏(Getty Images)

リベラルな価値観重視へ

 このことについての10月20日付の米主要紙社説2本を紹介します。

 ニューヨーク・タイムズ紙社説:「カナダにおける新トルドー時代」

 トルドーの圧勝はカナダ人がハーパー保守党首相の政治から離れる用意があったことを示す。トルドーは父親のトルドーの人気などで利益を得たが、カナダをリベラルで人道的価値の伝統に戻すと約束し、支持された。

 ハーパー首相は減税、政府プログラムの縮小、反テロ法を含む治安への強硬姿勢など保守的政策を推進した。

 トルドーはマリファナの合法化、反テロ法改正、F-35の購入中止、IS空爆への不参加などを主張した。トルドーはまた、気前のよい社会保障、国連など国際機関への活発な参加、人道的外交、包括的国家など、カナダの価値観に戻るとした。それを有権者にアピールした。ハーパーの保守主義はカナダのアイデンティティと合わなかった。

 米国人が良よく知っているように父親の遺産は助けにも邪魔にもなるが、トルドーの場合、プラスであろう。ただ経験という点では、父親は有名な弁護士、司法大臣であったが、若いトルドーはスノーボード指導者、高校教師でしかなかった。しかし彼は特に若い世代に感動を与える指導者である。これは政治においては重要であり、同時に期待も高める。

 ウォールストリート・ジャーナル紙社説:「カナダは左に行く」

 民主主義では、与党は飽きられるが、今回、カナダはハーパーを拒否し、トルドーに賭けた。カナダは資源価格低下もあり、経済も良くなくなった。

 変化を求める世論が自由党の圧勝につながった。問題は自由党が今後どうするかである。左翼の新民主党と連立を組まないで済むのは良い。トルドーは法人税15%の維持、キーストーン・パイプラインへの支持も表明している。しかし財政赤字は3年間で年あたり100億ドルを続けるとしている。これは成長のためにはならない。もっと大きな脅威は二酸化炭素の排出削減の公約で、カナダの資源投資を減少させる。

 外交では対IS作戦の空爆には参加しないとして、NATOへの協力も弱くなり、プーチンへの対応においても助けにならない可能性がある。

 カナダ経済は自由党の国家重視経済政策で苦境に陥ったが、その後の改革で良くなった。いまは資源価格低下が繁栄を脅かしている。トルドーはカナダの穏健左派は国の競争力を維持しうると示す必要がある、と言っています。

出 典:New York Times ‘A New Trudeau Era in Canada‘(October 20, 2015)
http://www.nytimes.com/2015/10/21/opinion/a-new-trudeau-era-in-canada.html?_r=0
Wall Street Journal ‘Canada Turns Left’(October 20, 2015)
http://www.wsj.com/articles/canada-turns-left-1445381947

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