2024年4月19日(金)

古希バックパッカー海外放浪記

2016年2月7日

歴戦の強者ハビエルと出会い、
イワ嶺(イワリョン)峠を越えて

 9月25日 雨も上がり青空が雲間に見える。午前8時、自転車カップルと出発。アンドレアはヘルメットにカメラを装着して走行中の景色を動画で撮影している。

 10時頃前方に重装備で年季の入ったポンコツ自転車を発見。追いついておしゃべりしながら並走する。髭もじゃ顔の彼はスペインのバスク地方出身の料理人であり3年程度の計画で世界周遊の途上。このハビエル君34歳は一年半前にバスク地方の“牛追い祭り”やヘミングウェイの小説“日はまた昇る”で有名なパンブローナの近くの故郷を出発。その後の行程を聞いて驚愕。

 スペイン→フランス→イタリア→クロアチア→アルバニア→ギリシア→トルコ→イラン→アフガニスタン→パキスタン→パミール高原→天山山脈(中国)→モンゴル→シベリア→バイカル湖→中国東北部(旧満州)→北京→山東省→韓国(仁川)→ソウル 走りながら頭の中で世界地図を広げる。

 アフガニスタンでは武装集団をしばしば見かけたが特段危険は感じなかったと。料理人という職業柄ローカルの食材に興味がありほとんど三食自炊で毎日野営して一年半。恐るべき冒険野郎であるが話していると人懐っこくて滅茶苦茶に面白い。トルコ以降の山岳地帯は悪路である。デコボコ道を40キロ近い荷物を積んで走る。自転車のスポーク破損は20回以上、更には自転車のタイヤのリム(ゴムタイヤの内側の金属製の車輪)そのものが折れたことが二回あるという。私はスポークの破損ですら過去45年くらいの自転車歴で一回もない。

 想像を絶する難行苦行である。パキスタンからパミール高原を越えてタクラマカン砂漠やタリム盆地を経て中国の西域の果てのウルムチまでの区間の自転車&テント旅というのは想像できない。唐代に中国から同じルートを逆に辿ったのが高僧玄奘である。すなわち三蔵法師や孫悟空の世界である。そういえばスペイン語のハビエル(Xavier)という名前は昔の歴史教科書では“ザビエル”と表記されていた。即ち艱難辛苦を乗り越えアジアへのキリスト教布教に命をかけた聖人フランシスコ・ザビエルである。そう思ってハビエルの髭面の横顔を見ると心なしか神々しく見えた。


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