2024年4月16日(火)

WEDGE REPORT

2015年11月28日

 中国経済の減速は、日本でも報道されている通りだが、それでもなお、世界経済において中国の存在感は圧倒的である。IMF(国際通貨基金)が10月に発表したレポートによると、中国の15年の経済成長率は6.8%、16年は6.3%と一時期よりは落ち込んでいるものの、7%台のインドと並び突出した成長率を誇る。

 14年の1人当たりGDPはインドの1608ドルに比べ、中国は7572ドルあることから、やはり中国の存在感は抜きん出ていることがわかる。鉄道輸送量や電力消費量などの投資関係の数値は弱まっているが、個人消費関連の数値は底堅く、不動産関連の数値も底打ちの兆しがみえる。

 なお、15年の日本の成長率は0.6%で、円安ということもあるが、GDPの規模では既に中国と倍以上の開きがある。マラソンでいえば、抜かれただけでなく、その後も圧倒的な差をつけられている状況にある。

 人民元の国際化を進めたい中国にとってみても英国の「利用価値」は大きい。本稿執筆時点ではまだ確定していないが、秒読み段階であり、英国が支持しているSDR構成通貨入りが決定すると、人民元を外貨準備資産として保有する国が増える。すると、人民元のオフショア取引が盛んになり、人民元建ての債券も増える。

 いわゆる「基軸通貨」ドルの地位を脅かす存在になることは容易ではないが、国際化に伴う人民元の重要性は高まっていくだろう。

 ただし、人民元が国際通貨となるには制約がありすぎる。金利は完全には自由化されていない、為替ヘッジにも制約が課されている、資金の海外移転には種々の制約があるなど「使い勝手の悪さ」は多岐にわたる。中国国内の改革派はSDR入りをきっかけに、自由化を進めたい考えなので、今後こうした「制約」が徐々に取り払われ、使いやすい国際通貨になっていくことは間違いないだろう。

英国が背負う金融立国の宿命

 英国の中国に対する「ご執心」ぶりに世間は驚いているが、歴史を紐解くと、実は英国は似たようなことばかりしていることがわかる。かつてはオイルマネーを取り込むために産油国をもてなし、ソ連崩壊後は旧ソ連圏の国のマネー取り込みを図り、我が日本もバブルのときには大層な歓待を受けた。そうした関心が今は中国に向かっているだけともいえる。

 もっとも、こうした活動あってこその現在のシティのポジションであり、世界屈指の金融センターに成長したシンガポールも同様の戦略をとっている。「金融立国になる」というのは、資金力のある国になびくということと同義である。かつて円も国際化を目指していたが、日本にはこうした観点・活動が欠けていた。

 外交面・安全保障面よりも、経済面での実利を優先し、中国の人権問題について言及しない英国の姿勢をみると、「もはや大国ではない」という意見にも納得がいく。

 (構成・Wedge編集部) 

  
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◆Wedge2015年12月号より

 


 


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