オトナの教養 週末の一冊

2015年11月29日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

読売新聞東京本社調査研究本部 主任研究員

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。福島支局、立川支局、経済部、政治部、ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスクを経て2014年より現職。著書に『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』『御社の寿命』、(いずれも中央公論新社)など

 東京という都市は本当にいろいろな顔がある。そしてその中心部である23区はそれぞれに特徴がある。本書はそうした東京の魅力を様々なデータを使いながら事細かく解明した本である。自分も幼少時から長きにわたって東京に暮らしているが、日本橋以東の地域などは知らないところばかりである。実際のところ、そうした地域に取材にゆく場合などには携帯用の地図が欠かせない。初めて見る地名は正確に読めないことも多い。

 個人的には30年以上も東京に住んでいるので、ほぼ大半の区を訪れたことがあるが、自分の育った生活圏以外では、正直、あまり詳しいことはわからない。ロンドンやパリ、ニューヨークなどの大都市でも同じだが、知らない場所にゆくのは、外国に旅行をするようなものである。そうした地域では日本でありながら車を運転するにも緊張するし、ナビがないとどこにも行けない。

 例えば、自分自身の場合、実家が神奈川県寄りの大田区だったので、大田、世田谷、目黒など周辺の地理はある程度わかるものの、生活圏を離れた東部や北部などは全く不案内である。本書を読んで自分の知らなかった東京を教えられた。

 本書の特徴は、プラス面もマイナス面も、23区それぞれの特徴を本音でストレートに評価しているところである。読む人にとっては、反発を覚える向きもあるかも知れない。しかし、ズバリ指摘されているがゆえに、「なるほど、そうか」と納得させられる。

 さらに、東京にまつわるこれまで気付かなかった点を、本書はいろいろと教えてくれる。実は23区では子どもが増えているという。少子高齢化といわれる時代の中においてである。東京には現在、20代後半から30代後半の若い世代が増えているが、それに伴って彼らの子ども世代が増えているのだ。
さらに千代田や中央、港のいわゆる「都心3区」では高齢化が止まったという。人口の流入が続いており、街の若返りが起こっているからである。

 港、品川、世田谷の各区では幼児が増加し、北区では小中学生が激減している。数年前、経済部デスクとして、北区の小学校が閉校するタイミングに合わせてある企業がイベントを行うという報道を扱ったことがある。この時、「東京でも閉校なのか」という印象を強く持ったが、子どもが少なくなれば学校が統廃合されるのは当然の流れである。本書を読むまで知らなかったが、品川区は手厚い子育て支援が行われており、学童保育や見守り運動などが充実していることで、子どもの数が増えているという。

 一方で、ひとたび大きな災害に見舞われると、都心では大きなリスクが顕在化してくることが予想され、実は危険と隣り合わせでもある。また、土地や建物を相続したり、処分するにあたっては様々な難しい問題に直面し、定住がままならないケースが出てきていることなども本書は指摘している。

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