2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年12月10日

核能力増強で更なる不安定化も

 パキスタンの核能力増強は、上記社説の言うとおり憂慮すべきものです。

 パキスタン、そしてインドの核能力の増強は、印パ対立のいわば当然の帰結といえますが、それ自体が緊張を高める新たな要因となっています。

 特に、パキスタンの核能力増強の努力は、通常兵器におけるインドの圧倒的優位に対抗するものとして、パキスタンの視点に立てば理にかなったものと言えますが、地域の安全保障状況の不安定化を促進するものであり、放置できません。

 いきなりパキスタンに核能力増強をやめさせるのは非現実的で、できることから始めるというオバマ政権の方針は適切です。

 社説はその一つとして、パキスタンの原子力供給国グループ参加支持を検討していると言っていますが、米国がインドにしたのは、原子力供給国グループが米国のインドに対する原発および関連技術の供給の承認を取り付けることでした。

 インドはその供給を受けるため、米国と原子力協力協定を締結しましたが、原子力供給国グループには入っていません。パキスタンについても、米国が原子力関連機材、技術をパキスタンに供給できるようにするということであり、これは原子力関連機材、技術に関し、パキスタンを世界ののけ者扱いにしないことを意味し、パキスタンの望むところであります。ただ、そのためパキスタンが、米国が条件と考えている戦術核兵器の推進を中止する用意があるかどうかは疑問です。

 戦術核兵器の推進を止めるべき理由の一つとして、テロリストの手に陥りやすいことが挙げられていますが、これは深刻な問題であり、つとに米国はこの脅威に警鐘を発し、パキスタン政府に働きかけてきました。パキスタン政府は核兵器の防護には万全を期していると述べていますが、果たして万全かどうかはわかりません。パキスタン政府は、全力を挙げてテロ対策に取り組むべきであり、戦術核兵器の推進の中止も、テロ対策の観点から見れば、考慮に値すると言えるのではないでしょうか。

  
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