「一匹狼型」テロの恐怖
米乱射、ISの誘いに呼応か


佐々木伸 (ささき・しん)  星槎大学客員教授

共同通信社客員論説委員。ベイルートやカイロ支局長を経て外信部副部長、ニュースセンター長、編集局長などを歴任。

WEDGE REPORT

時間軸の長い視点で深く掘り下げて、世界の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

»最新記事一覧へ

米カリフォルニア州サンバーナディーノで14人が犠牲になった銃乱射事件は連邦捜査局(FBI)によってテロだと断定された。犯人の夫婦のうち妻が犯行時刻にフェイスブックに過激派組織「イスラム国」(IS)に忠誠を誓う書き込みをしており、“地元でテロを起こせ”というISの誘いに呼応した「ローン・ウルフ(一匹狼)」型テロの恐怖が再び現実になった格好だ。

事件現場のカリフォルニア州サンバーナディーノ(Getty Images)

謎深まる動機

 FBIのコミー長官は夫婦が思想的に過激化し、「外国のテロ組織に感化された可能性がある」と指摘、特定の組織からの指示に基づいたテロではなく、ISなどイスラム過激派の思想に触発されて過激化していった「ホーム・グロウン(母国育ち)」の「一匹狼」型テロの可能性が濃厚であると示唆した。

 2人はパキスタン系米国人サイード・ファルーク(28)とタシュフイーン・マリク容疑者(29)で、ともにイスラム教徒。ファルークはサンバーナディーノ郡の公衆衛生部局の職員。福祉施設で2日に開かれた職員パーティに参加していたが、中座してマリクと現場に戻り、約70発を乱射した。

 2人は逃走したものの、警官隊との銃撃戦で死亡した。犯行現場にも3本のパイプ爆弾が残されていたが、自宅からは手製のパイプ爆弾12本、銃弾5000発が押収された。こうした武器が残されていたことで、2人はさらなるテロを計画していたのではないかと見られている。

 自宅はさながら簡易の武器工場。爆弾の点火装置に使われるクリスマス・ツリー型のミニチュア・ランプも押収された。このランプは、テロ組織「アラビア半島のアルカイダ」の機関誌最新号が遅発性点火装置として紹介していたものだ。

 最大の謎は乱射の動機だ。しかも生後6カ月の娘をマリクの母親に預けての犯行だ。調べによると、乱射では、上司が最初に撃たれたもようで、職場のトラブルもあった可能性がある。専門家の1人はこうした職場の不満とイスラムの過激思想が混合した“ハイブリッド・テロ”だったのではないか、とも指摘している。

1
nextpage
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
「WEDGE REPORT」

著者

佐々木伸(ささき・しん)

星槎大学客員教授

共同通信社客員論説委員。ベイルートやカイロ支局長を経て外信部副部長、ニュースセンター長、編集局長などを歴任。

WEDGE Infinity S
ウェッジからのご案内

Wedge、ひととき、書籍のご案内はこちらからどうぞ。

  • WEDGE
  • ひととき
  • ウェッジの書籍