2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年12月14日

関係改善のため協力すべき3つの分野とは

 今後次の三つの分野で協力を進めるべきだ。第一は、歴史問題での和解である。韓国人は、日本人は植民統治の苦痛を理解しないという。日本人は、韓国人は歴史の文脈を短絡化していると言う。歴史理解の統一はできないとしても、お互いの歴史理解を知ることは相互理解の第一歩となる。日韓の中、高等学校の間でバーチャルな歴史授業をするとか、教師の相互交流、共同歴史研究等は助けになる。相手の歴史解釈を切り捨てたり、無視したりすることは危険だ。歴史教育の非政治化や学者の間の歴史議論の実施等は緊張を和らげる。

 第二は、戦略的共通利益の分野での協力である。対北朝鮮政策や核不拡散、エネルギー、環境、サイバー、原子力安全等が含まれる。これらの協力は歴史問題の前進が不満足だと言って遅らせるべきではない。第三は、双方の政官財メディア関係者間の交流を通じ、啓蒙された指導層を作ることである。

 1998年の小渕・金大中共同声明は単なる外交声明ではなく、両国の間の関係改善のための共同行動の上に築かれたものだった。日韓関係を元に戻すためには首脳レベルでのコミットメントが不可欠である、と述べています。

出 典:James L. Schoff & Duyeon Kim‘Getting Japan?South Korea Relations Back on Track’(Carnegie Endowment for International Peace, November 9, 2015)
http://carnegieendowment.org/2015/11/09/getting-japan-south-korea-relations-back-on-track/ilbx

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日韓両国に横たわる認識のズレ

 上記論説に、特に驚くべき指摘はありませんが、日韓いずれの側の議論にも偏ることなく双方に衡平な議論をしています。しかし、歴史問題が動かないからと言って協力を止めるようなことはすべきでないとの苦言など、韓国側の問題を示唆する点もいくつかあります。米国の識者にも日韓双方の主張がそれぞれ理解されてきていることが窺われます。

 11月2日の日韓首脳会談は関係改善の「小さな一歩」だとし、今後三つの分野で長期的な協力を進めるよう提言しています。第一は歴史和解の努力、第二は戦略的共通利益の分野での協力、第三は政治、政府、経済、メディアなどの間の関係強化です。いずれの分野でも、既に多くの良い活動が実施されています。アジア女性基金の活動については充分に理解されているとは思えません。この記事でも言及はありません。

 日韓問題の多くに「認識ギャップ」があるとの見方には共感します。日韓の認識のズレは大きいと言えます。日韓に今重要なことは、事実に基づき率直な議論をすることではないでしょうか。

 先般の日韓首脳会談開催で関係改善が進むことを望みますが、そう簡単ではないかもしれません。首脳が役割を果たさなければなりませんし、外務当局が当事者意識を持って役割を果たさなければなりません。ひどく傷ついている世論が回復するには時間がかかるでしょう。更に、新しく中国の要素が日韓関係に入ってきています。これは相互の世界戦略観が関係します。しかし、米国とも連携しながら、辛抱強く努力していくしかないでしょう。

  
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